文化財としての価値の維持と、最新の技術による耐震化など安全性の向上――。熊本地震で被災した熊本城の復旧に関して、熊本市の大西一史市長が7月に表明した方針の一部だ。そのとき記事に書きながら、「確かに理想はそうだが、果たして可能だろうか」と思った。
熊本市は今後、国の重要文化財となっている建物の復旧では費用の90%を、国の特別史跡を構成する石垣の復旧では75%を国から補助されることで文化庁と合意している。同庁の方針で、どちらの復旧工事でも基本的に、被災前の状態をできる限り再現しなければならない。「最新の技術」を果たして導入できるか、先行きは不透明だ。
歴史ファンである筆者個人としては、せっかくの文化遺産に現代の技術はあまり出しゃばってもらいたくない気持ちもある。しかし、初代城主の加藤清正がいかに築城の名人でも、城の耐震性に関して現代に通用する知見を持っていたわけではないだろう。熊本城の耐震化はどうあるべきか…。自分なりの解決策を考えるうちに思い浮かんだのが、同城の宇土櫓(やぐら)だ。