6月25日から施行された改正建築士法。延べ面積300m2を超える案件で書面による契約締結が義務化されたことと並んで、同法の「肝」として注目されるのが、国土交通省告示15号が定める報酬基準に準拠した契約締結の努力義務化だ。設計報酬の適正化につながるはずのこの改正。実は不安やとまどいの声を上げる設計者が少なくない。現在の告示15号が抱える問題点を解決しないままでは、設計者にデメリットが生じる可能性があるからだ。
告示15号は、2009年1月に施行された設計・監理業務の報酬基準だ。当時、設計報酬の適正化を図ることができると、鳴り物入りで打ち出された。人件費や経費を実際に計算して積み上げる「実費加算方式」と、人件費や経費を簡易に計算できる「略算方式」とがあるが、一般には略算方式を用いる設計事務所が多いと思われる。
人件費や経費の計算を略算式で簡易に計算できるようにする考え方は、改定前の報酬基準の告示1206号と同じだ。異なるのは略算式で用いる略算表を実態に合致するように、より精緻にしたこと。例えば、略算表で建築物の用途別に示す標準業務量を、国交省が08年2月から3月にかけて実施した実態調査を基に見直した。告示1206号では工事費ベースだった算定の基準を床面積ベースに、計算の単位を「人・日数」から「人・時間数」に改めるなど、設計者にとって納得度の高い報酬算定ができるように改めた。
この告示15号による報酬算定を改正建築士法で努力義務化した。裏を返せば、努力義務化しなければならないほど国交省の狙い通りには使われていないことの表れと言っていいだろう。