法の知識をストック活用時代の武器に

 とはいえ、「減築には原則、建築確認は必要ない」ということを知っているかどうかで、計画の立て方は大きく変わるはずだ。本書では減築に限らず、「用途変更」や「耐震補強」などに建築確認が必要かどうかがすぐに分かるチャート図も掲載している。

建築確認の要不要をチャート化した(資料:ビューローベリタスジャパンの資料を参考に日経アーキテクチュアが作成)
建築確認の要不要をチャート化した(資料:ビューローベリタスジャパンの資料を参考に日経アーキテクチュアが作成)

 また、増改築や用途変更を行う場合に適用となる条文、あるいは緩和規定のある条文のリストや、建築法規の主な改正の歴史をまとめた年表も収録した。

「増改築の法規入門」巻頭折り込みの条文チェックリスト(資料:東京建築士会法規委員会が作成した資料をもとにビューローベリタスジャパンが加筆)
「増改築の法規入門」巻頭折り込みの条文チェックリスト(資料:東京建築士会法規委員会が作成した資料をもとにビューローベリタスジャパンが加筆)

「増改築の法規入門」巻頭折り込みの法改正年表(資料:ビューローベリタスジャパンの資料を参考に日経アーキテクチュアが作成)
「増改築の法規入門」巻頭折り込みの法改正年表(資料:ビューローベリタスジャパンの資料を参考に日経アーキテクチュアが作成)

 現状では、法規があまりに分かりづらいがために、改修設計の相談を受けても、深く考えることなく「建築確認が不要な範囲での改修」を提案する設計者が少なくないと思われる。そうした不確かな法知識のなかでできる提案は、結果的に、構造躯体とは関係のない表面的なものにとどまりがちになる。

 実際には、建築確認不要の範囲でも構造を強化する本格的な改修は可能だ。本書の前半では、戦略的に「建築確認なし」の方針を採った改修事例も多数掲載している。

「若鶴大正蔵」の改修プロセスを紹介した記事の一部。あえて建築確認不要を選択し、構造補強しつつも木の架構を見える形で残した。書籍の前半には15件の増改築実例を建築確認あり・なしに分けて掲載している(資料:日経アーキテクチュア、記事中の写真:吉田 誠)
「若鶴大正蔵」の改修プロセスを紹介した記事の一部。あえて建築確認不要を選択し、構造補強しつつも木の架構を見える形で残した。書籍の前半には15件の増改築実例を建築確認あり・なしに分けて掲載している(資料:日経アーキテクチュア、記事中の写真:吉田 誠)

 ストック活用が本格化するこれからの時代に、増改築に関わる法の知識は大きな武器となる。表紙に「新時代のバイブル!」と書いたのも、決して大げさではない。ぜひ一度手に取っていただきたい。目次をご覧になりたい方はこちらへ。電子書籍はこちら

「増改築の法規入門」の表紙。定価:本体3800円+税。日経アーキテクチュア、ビューローベリタスジャパン著。B5判、208ページ。ISBN:978-4-8222-0064-0。商品番号:254240。発行日:2016年6月28日(資料:日経アーキテクチュア)
「増改築の法規入門」の表紙。定価:本体3800円+税。日経アーキテクチュア、ビューローベリタスジャパン著。B5判、208ページ。ISBN:978-4-8222-0064-0。商品番号:254240。発行日:2016年6月28日(資料:日経アーキテクチュア)
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