地震に強い木造住宅の家づくりについて、今後、法や制度などの大幅な見直しが必要なのだろうか――。

 4月に発生した熊本地震では、2000年より後に建てられた、現行の耐震基準の木造住宅も倒壊した。日経ホームビルダーでは、耐震等級2の住宅が倒壊したプロセスを検証。そこからは、壁の配置や壁量、繰り返しの地震動など、耐震性能を確保する上での様々な課題が見えてきた。

 国も動いている。国土交通省は5月26日熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会を開催。建物被害の原因を分析する方針だ。その分析を踏まえ、建築基準法の在り方などについて検討することも示唆している(関連記事:建基法のあり方も検討、熊本地震の被害を分析)。

耐震等級2の住宅が倒壊したプロセスを日経ホームビルダー7月号で検証(写真:日経ホームビルダー 資料:右上はインテグラル、左下は小谷竜城さんが作成したシミュレーションをもとに日経ホームビルダーが作成)
耐震等級2の住宅が倒壊したプロセスを日経ホームビルダー7月号で検証(写真:日経ホームビルダー 資料:右上はインテグラル、左下は小谷竜城さんが作成したシミュレーションをもとに日経ホームビルダーが作成)
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 だが、この問題、全てを国任せにしておいていいのだろうか。仕様を変更したりして、より地震に強い家づくりを目指すなど、家づくりのプロである工務店や設計事務所にできることはあるはずだ。例えば、熊本で被害に遭ったある工務店では、耐震性能をより高めるために制振システムの導入を検討し、勉強会を開くなど動き出している。

 「4号特例」をあえて利用しないこともその一つだろう。「我々は、建て主の命を守る住宅をつくっているのだから、4号特例に甘えていてはダメだ」と指摘する工務店の代表者もいる。許容応力度計算などの構造計算を行い、「第三者にチェックしてもらうことが重要」と続ける。

 4号特例とは、「4号建築物」と呼ばれる300m2未満の木造2階建てなどの条件を満たした建物について建築士が設計・工事監理をした場合、建築確認の構造関係規定の審査を省略する制度だ。この制度を誤解し、構造チェックを正しく行わないために、耐震性能が低い住宅が建てられてしまうケースもある。国土交通省は2007年末、4号特例の見直し時期について「一定の周知期間をおき、設計者などが内容を十分に習熟した後、施行予定」と説明しているが、見直し時期が明示されることはこれまでなかった。

 だが、4号特例の制度があっても、審査を省略されている構造関係の図書類は本来、用意しなければならないものだ。さらに、住宅性能表示制度などを利用すれば、これら構造関係の図書類を第三者がチェックすることも可能だ。なにも、国が4号特例を廃止することを待たなくても、特例に頼らない設計を自らすればよい。そんな前向きな考えの工務店もいるのだ。

 日経ホームビルダーでは、熊本地震をきっかけに家づくりのプロである実務者を対象に、耐震に関するアンケート調査を企画した。木造住宅の耐震基準や4号特例、建築基準法の在り方などについてたずねている。結果は日経ホームビルダーや日経アーキテクチュア・ウェブサイトなどに掲載する予定だ。ぜひ、回答してほしい