羽田空港の地盤改良工事で、東亜建設工業が施工データを改ざんし、発注者の国土交通省関東地方整備局に虚偽の報告をしていた。5月13日には、新たに福岡空港と松山空港でも施工不良を隠蔽していたことが分かった。建設業界の不正は、「全棟建て替え」に揺れるマンションの杭工事データ偽装問題が冷めやらぬ中、またもや起こった。

 問題の経緯を伝える関東地方整備局の発表資料には、「契約図書に基づく施工の達成率0%」「改良体の造成の達成率0%」「薬液注入量の達成率5.4%」が淡々と記載されている。あまりのずさんさにあぜんとしたが、悲しい気持ちにもなった。なぜ、東亜建設工業はここまでひどい不正に手を染めたのか。

東京国際空港C滑走路他地盤改良工事の施工不良の状況(資料:国土交通省関東地方整備局)
東京国際空港C滑走路他地盤改良工事の施工不良の状況(資料:国土交通省関東地方整備局)
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 東亜建設工業によると、羽田空港C滑走路の地盤改良工事では、コンクリート片や廃タイヤなど、着工前に想定していた以上の障害物が地中にあり、思うように削孔できなかったという(関連記事:全て施工不良、最初から偽装 東亜建設の羽田地盤改良)。

 不正が発覚した5件の工事はいずれも、東亜建設工業が開発した「バルーングラウト工法」を採用している。不正行為には、羽田空港H誘導路は東京支店の土木部長、同C滑走路は東京支店長、福岡空港は支店の課長、松山空港は現場所長がそれぞれ関与していた。さらに5件全ての工事で、バルーングラウト工法の開発チームであるエンジアリング事業部防災事業室と機電部機械グループが不正に関わっていた(関連記事:福岡・松山空港でも偽装、開発チームが全て関与)。

不正が発覚した5件の工事の施工不良の概要(資料:国土交通省と東亜建設工業の資料を基に日経コンストラクションが作成)
不正が発覚した5件の工事の施工不良の概要(資料:国土交通省と東亜建設工業の資料を基に日経コンストラクションが作成)
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 発注者は、不正を生んだ背景をどう考えているのだろうか。

 確かに、契約図書における発注者の監督と検査はきちんと行っていたようだ。受注者がモニター表示を改ざんし、採取資料をすり替え、虚偽の報告をするという想定外の不誠実な行為がなされたため、発注者はだまされてしまった。地盤面下の施工の出来形や品質は目視で確認しにくく、データに頼らざるを得ないため、チェックの盲点を突かれた面もあるかもしれない。

 ただ、民間工事と違って、公共工事の発注者はプロだ。ずぶの素人ではない。しかも建設現場は発注者と受注者が協働してものづくりに取り組む場でもある。「受注者を信用したことにぬかりがあった」などの無邪気な言い訳は到底通用しないだろう。

東京国際空港C滑走路他地盤改良工事の監督の主な実施内容(資料:国土交通省関東地方整備局)
東京国際空港C滑走路他地盤改良工事の監督の主な実施内容(資料:国土交通省関東地方整備局)
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東京国際空港C滑走路他地盤改良工事の検査の主な実施内容(資料:国土交通省関東地方整備局)
東京国際空港C滑走路他地盤改良工事の検査の主な実施内容(資料:国土交通省関東地方整備局)
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