平時の維持管理に不安

 道路を災害時に被災者が頼れるインフラとして存続させるためには、道路工事の受発注者による平時の維持管理や補修、改修が欠かせない。高度経済成長期以降に広がった道路網の経年劣化が進む一方で、土木界への人材の供給が依然として十分ではない近年、この業務はハードさを増しているとみられる。

 2015年2月には、西日本高速道路会社で既存区間の改修工事の担当者だった社員が過労自殺する痛ましい事件があった。受注者側の労働実態も過酷だ。17年1月には、橋梁メーカー勤務で都市部の高速道路の改修工事を担当している日経コンストラクションの読者が、金曜日の午後9時以降に発注者の要請を受けて週末に資料を作成することがよくあると筆者に吐露した。

 道路工事を担う人材が健康を保てなければ、いずれは道路自体も物理的に健全でなくなってしまうだろう。

 安倍内閣が働き方改革で検討している長時間労働の是正に対し、日本建設業連合会は3月3日、「方向性としては歓迎」としながらも実施は20年の東京五輪以降とするよう求めるコメントを発表した。少子化が続く中、道路工事関係を含む建設業界がこのような姿勢で若者の入職を確保し、他産業との“サバイバル”に勝ち残れるか、不安が残る。

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