熊本大地震では、建築基準法や宅地造成等規制法に適合していない擁壁の崩落問題がクローズアップされた。しかし、擁壁が問題になるのは地震の被災地ばかりではない。
例えば、1960年代には高級感がもてはやされた大谷石の擁壁だが、現在は耐力がないものとして扱われる。大谷石の擁壁は全国各地に現存している。風化が激しい大谷石の老朽化が進み、土圧に耐えられずに崩落する事例も散見される。
特に危険なのが、既存の擁壁の上に増設した「増し積み擁壁」だ。既存擁壁の築造時には想定していなかった土圧がかかり、既存擁壁にクラックが入っている状態のものも見られる。大地震が発生した時はもちろん、降雨量の増大で水圧がかかるとさらに崩壊の危険性が高まる。
擁壁には土の荷重(土圧)と、地中にたまった雨水などの水圧がかかる。さらに建物の荷重が加わるので、十分な強度がなければ、最悪の場合は倒壊や不同沈下につながる。