無筋コンクリートの擁壁もある

 コンクリートで出来ているからといって安心できない。鉄筋が入っておらず、十分な強度を確保できていない事例も少なくない。そもそも、工作物申請が不要な高さ2m未満の擁壁は通常、検査済み証がない。2m以上の擁壁でも、古い造成地では検査済み証がないことも珍しくない。構造計算書など強度を示す資料がなければ、「強度なし」を前提に設計しなければならない。

 敷地に既存擁壁があったり、既存擁壁に接していたりしたら、まずは役所で既存擁壁の検査済み証を確認し、擁壁の構造や強度などを確認する必要がある。そのうえで、現地で擁壁を目視確認すべきだ。

 構造耐力上の危険性は目視である程度は推測できる。擁壁に大きなひび割れがあれば、無筋コンクリートの可能性がある。水抜き穴がなければ、雨の日に雨水がたまって水圧が擁壁にかかる。前述した増し積み擁壁ならば大きな土圧がかかっていると予想できる。

豪雨によって裏手にあった緩傾斜地で崩壊が発生。その崩土によって倒壊した住宅(写真:応用地質)
豪雨によって裏手にあった緩傾斜地で崩壊が発生。その崩土によって倒壊した住宅(写真:応用地質)
[画像のクリックで拡大表示]

 敷地内に強度が分からない擁壁があれば、敷地の条件や、建築する建物の構造や規模、発注者の予算などを考慮して対策を考えなくてはならない。応急処置として仮設山留めを擁壁に設けて補強したり、建物の荷重の影響で擁壁が傾かないように柱状改良を行ったり、様々な対応が考えられる。

 大地震に対する危機意識が高まり、「ゲリラ豪雨」が珍しくなくなった今、建築設計者にも擁壁に関する知識が求められる。敷地内に擁壁があった場合は入念に敷地を調査し、構造設計者らと擁壁対策を練る必要がある。

日経アーキテクチュアは3月7日にセミナー「設計者が知っておくべき 地盤トラブルの防止術」を開催します。詳しくは[こちら]をご覧ください