古地図や地形図でも地盤の状況を調べられる

 「木造2階建ての小規模住宅で、コストのかかるボーリング調査までは手を出せない。建て主の理解を得られない」。こんな見解を示す建築設計者は多い。

 しかし、地盤の状況を把握するための情報は、何もボーリング調査やSWS試験のような地盤調査結果に限らない。古地図や国土地理院がウェブサイト上で公開している地形図、過去の航空写真なども敷地の地盤を把握するために有効だ。

 例えば、古地図で調べると100年前は河川だった「旧河道」であれば、内陸部の住宅密集地でも液状化の可能性が高い。30年前の航空写真を見て敷地に工場のような建物が立っていれば、その敷地は締め固められているが、残存基礎がある可能性が高い。

国土地理院のウェブサイトで閲覧できる地形図(2万5000分の1)に日経アーキテクチュアが加筆。川筋で曲線を描く道や堤防があれば、旧河道や沼、池などを埋め立てた造成地であることを示す場合が多い
国土地理院のウェブサイトで閲覧できる地形図(2万5000分の1)に日経アーキテクチュアが加筆。川筋で曲線を描く道や堤防があれば、旧河道や沼、池などを埋め立てた造成地であることを示す場合が多い
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国土地理院が公開している治水地形分類図。緑色の部分は、河川の洪水時に流水が運搬した泥土で形成される「氾濫平野」と呼ばれる軟弱地盤だ(資料:国土地理院)
国土地理院が公開している治水地形分類図。緑色の部分は、河川の洪水時に流水が運搬した泥土で形成される「氾濫平野」と呼ばれる軟弱地盤だ(資料:国土地理院)
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 地盤に詳しい応用地質技術本部技師長室の上野将司顧問は、「過去の履歴やボーリング調査データなどの情報を収集し、敷地の地盤について知ることが、地盤トラブルを防ぐ最大の対策だ」と話す。

 大地震が発生した際の液状化や豪雨に伴う土石流、突然の陥没など地盤をめぐるトラブルは相次いでいる。発注者の地盤への関心は高まる一方だ。建築実務者にとって、地盤の情報を収集してトラブルを防止する姿勢が一層問われる。

日経アーキテクチュアは3月7日にセミナー「設計者が知っておくべき 地盤トラブルの防止術」を開催します。詳しくは[こちら]をご覧ください