難しい案件には衆知も必要

 しかし型破りの、または過去の知見が必ずしも通用しないような建設プロジェクトでは、従来型の上下関係が崩れるケースも出てきている。

 冒頭で触れた品川駅西口駅前広場はその好例だ。造る場所が駅の敷地の外で国道の上空のため、国土交通省東京国道事務所が発注を担当しているが、実質的には鉄道施設であり、商業施設の機能も担う多面的な施設だ。そこで同事務所は通常のプロジェクトのように設計や工事を発注する前に、鉄道会社2社(京浜急行電鉄とJR東日本)と商業施設運営を手掛ける不動産会社(西武プロパティーズ)の計3社を事業協力者として迎えた。

 もっと頻繁に発注される案件でも、従来型の発注方式が通用しないケースがあるのではないだろうか。例えば、膨大な数に上る既存インフラの補修や改修だ。

 経年劣化が進んだインフラは病人のようなものだ。劣化の様相は整備した時期や環境、さらに供用開始後の状況によって異なるから、発注者としては対策を講じるうえで医療のようにセカンドオピニオンが欲しくなってもおかしくない。だが、受注者を代表して元請け会社やJVの幹事会社が結論を出した後で、下請け会社やJVのその他の構成員が独自の見解を述べるのは、いくら発注者から求められても恐らく困難だ。

 既存インフラの一部には、運営権を民間事業者に売却する「コンセッション」が導入され始めている。導入対象となったインフラについては、運営を受託した民間事業者は補修工事などを公共事業の原則にとらわれずに発注できるはずだ。

 あくまで個人的な願いだが、難しい案件では必要に応じて衆知を集められるように、コストが許す範囲で多様な発注方式を試して、その成果を公表してくれたらと思う。インフラ老朽化問題に対する大きな貢献となるだろう。

日経コンストラクション2016年10月24日号特集「動き出すコンセッション」から
日経コンストラクション2016年10月24日号特集「動き出すコンセッション」から
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