「震度7の割に、土木構造物の被害はそれほど多くなかったようだ。明日は追加の取材をして一旦東京に戻ろうか」。熊本地震の取材を終えた4月15日の夜、筆者はこのように考えて宿泊先で床に就いた。だが、直後に16日未明の「本震」に遭遇。楽観的な見方はすぐさま打ち砕かれた。
夜が明けると、状況は悪化していた。熊本市内などでは橋に段差が多発。14日夜の前震で被害を受け、応急処置をして通行を再開した橋でも再び段差が発生し、交通渋滞の一因となっていた。
熊本駅から東に向かう県道22号の白川橋では、14日夜の前震で段差が生じた。15日午前0時43分に全面通行止めとし、アスファルトで応急処置を済ませて午前4時過ぎには規制を解除したが、16日未明の本震で再び全面通行止めとなった。
現地を訪れてみると、橋のたもとの伸縮装置に段差が生じている。伸縮装置は、気温の変化による橋桁の伸び縮みを吸収する鋼製の部材。伸縮装置に段差などができていると、橋の支承や下部構造が損傷している恐れがある。
筆者が橋の下に回ってみると、案の定、支承が破損していた。支承は、橋桁の伸縮や回転を吸収し、荷重を橋台や橋脚に伝える重要部材だ。白川橋では回転を吸収するためのピンが抜けてしまっていた。支承の補修や交換には、橋桁を一旦ジャッキアップして仮支えするなどの大掛かりな工事が必要。復旧は難しい作業になりそうだ。