熊本地震で被災した自治体管理の道路施設などを、国が代行して復旧することになった。政府は5月10日、熊本地震を大規模災害復興法が定める「非常災害」に指定し、国が復旧事業を代行できるようにする政令を閣議決定した。2013年6月の同法施行以来、初めての適用だ。一方、国土交通省はこれに先立つ5月9日、道路法の規定を適用して、阿蘇大橋の復旧を国が代行すると発表している。
東日本大震災を受けて制定した大規模災害復興法は、復興事業における国と自治体の役割分担などを定めている。非常災害は、国が復興対策本部を設置できる「特定大規模災害」に次ぐ位置付けで、都道府県や市町村の要請に応じて国が道路や河川、海岸などの災害復旧事業を代行できる。
道路法にも、災害復旧に関する工事を国が代行できるとする規定がある。ただし、対象は国道で、工事に高度な技術を要する場合などに限られる。対象から外れている都道府県道や市町村道を、大規模災害復興法が補完する。
熊本県が管理する阿蘇大橋は、国道325号の一部だ。活断層に隣接しており、深い谷間に架けるなど、復旧には高度な技術を要する。国交省は、より迅速に復旧に着手するため、非常災害の指定を待たず、道路法を適用して代行することに決めた。
熊本県が早期復旧に向けて国に代行を要望していたのは、国道325号のほか、県道熊本高森線(俵山ルート)や南阿蘇村の村道栃の木―立野線など。被災した俵山トンネルなどが代行の対象になるとみられる。県から具体的な区間や施設を示した要請を受けたうえで、国が対象を決める。
代行事業では、国が事業主体となって調査や設計、工事の発注、工事監理、完成検査などを実施する。国と県の費用負担の割合は、代行事業でない場合と同じだ。なお、4月26日付で政府が熊本地震を激甚災害に指定し、国庫補助率のかさ上げを決めている。