石管そのものか、目地のしっくいが割れたか

 通潤橋は、江戸時代末期の1854年に完成した長さ約76m、幅員6.3mの石造アーチ橋。水面からの高さは約20.2m。国の重要文化財に指定されている。

 深い谷に囲まれた対岸の白糸台地にかんがい用の水を送るために造られた。石材で巨大なアーチを造る石工や大工の技術に加え、約6km上流で取水して自然勾配で送る水路を敷くための測量技術など、当時の土木技術を結集した橋だ。

通潤橋を通って白糸台地にかんがい用水を送るルート(写真:日経コンストラクション)
通潤橋を通って白糸台地にかんがい用水を送るルート(写真:日経コンストラクション)
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 資料館でガイドを務める石山信次郎さんに話を聞いた。石山さんは旧矢部町(現在は山都町)で土木職員を務め、教育委員会で文化財保護の仕事も担当した通潤橋をよく知る人物だ。

 石山さんによれば、4月14日の前震のあと、水が噴き出すようになった。さらに16日未明の本震後、噴き出す水の量が増え、アーチの下にも水が落ちるようになったという。

石管について説明する石山信次郎さん。石管は約90cm角で、中が約30cm角でくり抜かれている(写真:日経コンストラクション)
石管について説明する石山信次郎さん。石管は約90cm角で、中が約30cm角でくり抜かれている(写真:日経コンストラクション)
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 原因として考えられるのは、石管そのものが割れるなどの被害が生じていること。または、石管同士をつなぐ目地のしっくいが割れたか。その両方かだ。さらに、水がアーチまで漏れていることから、石管下の粘土層にも亀裂が生じた恐れがある。

 アーチ本体に水が浸み込むと、寒い冬は水が凍って膨張し、アーチに深刻なダメージを及ぼす。そのため目地のしっくいや粘土層などの水漏れ対策を講じている。ブルーシートを掛けているのも、アーチ内に水が浸透しないようにするためだ。