4月16日未明の本震後、熊本県南阿蘇村の阿蘇大橋が崩落したという情報が、報道やインターネット上で飛び交い始めた。結果的にこの情報は真実だったが、当時は真偽を判断する材料がない。筆者は自分の目で確かめるため、16日朝に熊本市内から国道57号をたどって南阿蘇村に向かった。
頻発する余震で眠れぬ夜が明け、ヘリコプターやドローン(小型無人航空機)による空撮映像などが出回るまで、阿蘇大橋の落橋は噂の域を出なかった。かくいう筆者も半信半疑だった。というのも、同じく落橋の報道があった龍神橋は、落ちていなかったからだ。
龍神橋は、熊本大学付近の白川に架かる。南阿蘇村に向かう前に立ち寄ってみると、車の通行を規制してはいたものの、近所の人は徒歩で橋を渡っていた。もしかしたら阿蘇大橋も、落ちてはいないのかもしれない――。そんな風に考えながら、国道57号を東に向かった。
黒川に架かる阿蘇大橋は、橋長約205m、幅8mの上路式トラスト逆ランガー桁橋。1970年に完成した。熊本市内から阿蘇方面に向かう際に利用される交通の要衝だ。地元の人には、「自殺の名所」としても知られている。
かつては塗装が赤かったので「赤橋」と呼ばれていたが、縁起が悪いとして緑色に塗り替えられた――。そんな話をタクシーの運転手に教えてもらいながら、「今日は昼過ぎから雨が降るというから危険だ。急いで帰ってこなければならない」などと頭の中で滞在時間を計算した。