今年3月で事故から丸5年を迎える東京電力福島第一原子力発電所。あまり知られていないが、土木や建築の作業員を中心に毎日7000人弱が働く巨大現場だ。

 日経コンストラクション2016年2月22日号の特集「7000人の戦線、福島第一原発」では、未曽有の事故の収束に向けて進む凍土遮水壁や燃料取り出し用カバーの工事についてリポートした。本稿では、誌面に掲載しきれなかった写真やこぼれ話を盛り込みながら、工事の状況をお伝えする。特集記事と併せてお読み頂きたい。


 筆者は1月27日、日本記者クラブ取材団の一員として福島第一原発に向かった。発電所の正門付近にある入退域管理棟の下駄箱には、見知った企業名がずらり。鹿島に大成建設、清水建設、前田建設工業――。東京電力から工事などを受注している企業は、元請けだけで42社(メーカーを含む)に上るのだ。

 入退域管理棟と隣り合う大型休憩所の7階からは、発電所の敷地が一望できる。林立する汚染水の貯蔵タンクの向こうには、1~4号機原子炉建屋と大型クレーンのジブが見える。
 ⇒福島第一原発が灰色に染まりゆく

発電所の正門付近にある大型休憩所の7階から見た福島第一原発。汚染水を貯蔵するタンクは約1000基ある(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
発電所の正門付近にある大型休憩所の7階から見た福島第一原発。汚染水を貯蔵するタンクは約1000基ある(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
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APD(警報付き個人線量計)の貸し出し装置と作業員(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
APD(警報付き個人線量計)の貸し出し装置と作業員(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
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2015年6月に運用を開始した大型休憩所内の食堂。大熊町に建設した給食センターで調理し、温かい食事を提供する。メニューは2種類の定食とカレー、丼、麺の合計5種類。日によってトッピングなどが変わる。値段は一律380円(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
2015年6月に運用を開始した大型休憩所内の食堂。大熊町に建設した給食センターで調理し、温かい食事を提供する。メニューは2種類の定食とカレー、丼、麺の合計5種類。日によってトッピングなどが変わる。値段は一律380円(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
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 APD(警報付き個人線量計)を受け取り、サージカルマスク(風邪予防に用いる一般的なマスク)を付けて構内に入る。行き交う車に気を付けながら、少し歩いてバスに乗り込み、作業の拠点である免震重要棟に入った。

 ここで白い防護服に身を包み、半面マスクと眼鏡、ヘルメットを着ける。軍足は2重、手袋は3重だ。慣れない半面マスクが息苦しく、緊張感が高まる。声がこもるので、大声で話し掛けないと伝わらない。「ご安全に」と送り出されてバスに乗り、すぐに1号機西側の高台に到着した。

仕事を終え、仲間と談笑しながら帰路につく作業員。建設会社のほか、日立グループや東芝、三菱重工業といったメーカーの下で働いている(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
仕事を終え、仲間と談笑しながら帰路につく作業員。建設会社のほか、日立グループや東芝、三菱重工業といったメーカーの下で働いている(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
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免震重要棟の壁をびっしりと埋める寄せ書きや千羽鶴(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
免震重要棟の壁をびっしりと埋める寄せ書きや千羽鶴(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
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免震重要棟の内部。ゴム手袋などが整理して置かれている。防護服やゴム手袋は使い捨て。東京電力は、使用済みの防護服などを焼却する雑固体廃棄物焼却設備の運用を始める予定だ(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
免震重要棟の内部。ゴム手袋などが整理して置かれている。防護服やゴム手袋は使い捨て。東京電力は、使用済みの防護服などを焼却する雑固体廃棄物焼却設備の運用を始める予定だ(写真:日本記者クラブ取材団代表撮影)
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