(著)熱血ドボ研2030、(編)岩城一郎、石田哲也、細田暁、日経コンストラクション、定価:本体3,400円+税

 東日本大震災の被災地で、従来の方法にとらわれず、品質と耐久性にこだわったコンクリートを造ろうとする革命が起きています。

 革命の全貌について、大学の有識者、建設会社や道路会社の技術者など、第一線で活躍する当事者が書き下ろした書籍「新設コンクリート革命」が、3月20日に発行されました。

 この短期連載では、本書に掲載した内容の一部を紹介していきます。第5回と次の最終回では、著者が語った「革命の舞台裏」について、特別に公開します。

「すごいシステムだと感銘」

震災後に東北地方で始まったコンクリートの品質・耐久性確保に向けた取り組みから、4年がたつ。思想は現場に浸透してきたのか――。書籍の著者である「熱血ドボ研2030」のメンバーが集まり、コンクリートの品質・耐久性確保のこれまでを振り返った。聞き手は日本ダム協会参事の中野朱美氏。

2016年9月15日に東京大学で開かれた座談会の様子(写真:日経コンストラクション)
2016年9月15日に東京大学で開かれた座談会の様子(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

――東北地方整備局で2012年に施工状況把握チェックシートと目視評価法を試行的に導入しました。それに基づいて造られた構造物が続々と完成しています。試行によってどのような効果がありましたか。

佐藤 和徳氏: 以前と比べると、コンクリートの品質は良くなっています。うまくいかない例ももちろんあるのですが、仕上がりが格段に良くなっている現場が出てきたと感じます。施工状況把握チェックシートと目視評価法以外に、コンクリートを可能な限り緻密にするという取り組みも導入しました。

 それでも、山口県のコンクリート構造物にはかなわない。どうすればあのレベルにいけるのか私には分からないけれども、少なくとも今までの構造物とは全然違うレベルの品質のコンクリートが、東北でもやっと出来始めました。

佐藤 和徳(さとう・かずのり)/国土交通省東北地方整備局地方事業評価管理官(写真:日経コンストラクション)
佐藤 和徳(さとう・かずのり)/国土交通省東北地方整備局地方事業評価管理官(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]

――東北地整で導入した山口県発の「施工状況把握チェックシート」ですが、コンクリートの専門家から見ても画期的だったのでしょうか。

細田 暁氏:山口県のシステムと出会ったのは2009年です。コンクリートのひび割れは、材料や設計、施工、環境、気温など、様々な影響を受けて発生します。原因を特定するのは、非常に難しい現象ですが、山口県はそれを改善していました。実際にコンクリート構造物のひび割れが減って、場合によっては無くなっている。すごいシステムだと感銘を受けました。

 そのシステムの根幹の一つが、施工状況把握チェックシートです。紙1枚ですが、それによって人との仕事のやり方が変わるのがポイントです。打込み作業などに対して事前の準備をしっかりするし、施工者と作業員のコミュニケーションも増えます。良いものを造ろうという目的に向かうための1枚のシカケです。

細田 暁(ほそだ・あきら)/横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授(写真:日経コンストラクション)
細田 暁(ほそだ・あきら)/横浜国立大学大学院都市イノベーション研究院准教授(写真:日経コンストラクション)
[画像のクリックで拡大表示]