局所的ではなく全体の品質を評価できる

 寒冷地で冬季に施工する場合は、型枠の存置期間や脱型後の養生が不十分であることなどにより、微細なひび割れが発生しやすく、耐久性に悪影響を及ぼす可能性がある。そのため、目視評価法の項目に「微細ひび割れ」を追加して活用している。

 また、コンクリート構造物の耐久性には直接影響しないと思われるものの、美観の観点から「表面の色つや」を加えて品質管理に活用する場合もある。対象構造物や活用の目的に応じて、目視評価法の項目は追加・省略や変更が可能である。評価基準は、実際の構造物でPDCAが適切に機能するように現場での試行結果に基づいて設定するのがよい。

 目視評価法を実構造物の品質確保の試行工事に導入した結果、以下に示すような目視評価法の特徴が把握できた。

 まず、脱型後のコンクリート表面の状態について項目に分け、評価基準を与えたことで、これまで漫然と眺めていた出来栄えが、より明確に見えるようになった。人間は見ているようで、何も見えていない場合がほとんどなのである。

 2つ目が究極の非破壊試験であることだ。特別な器具を使わず、基本的に離れた箇所からの評価が可能なので、特別な足場は不要である。また脱型直後から実施可能である。評価に必要な時間も短く、1エリアの評価に要する時間は1~2分だ。

 3つ目は評価エリア全体の品質を評価できることだ。表層品質をリバウンドハンマーや表層透気試験、表面吸水試験などで評価する場合は、基本的に局所的な評価となり、全体を評価することは不可能である。

表面吸水試験の様子。中央が円形の吸水カップ。カップの中央で300mm の初期水頭を与える(写真:細田 暁)
表面吸水試験の様子。中央が円形の吸水カップ。カップの中央で300mm の初期水頭を与える(写真:細田 暁)
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表層透気試験の様子。コンクリートに円形の吸盤が吸い付いて、透気試験を行っている(写真:細田 暁)
表層透気試験の様子。コンクリートに円形の吸盤が吸い付いて、透気試験を行っている(写真:細田 暁)
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