東日本大震災の被災地で、従来の方法にとらわれず、品質と耐久性にこだわったコンクリートを造ろうとする革命が起きています。
革命の全貌について、大学の有識者、建設会社や道路会社の技術者など、第一線で活躍する当事者が書き下ろした書籍「新設コンクリート革命」が、3月20日に発行されました。
この短期連載では、本書に掲載した内容の一部を紹介していきます。第2回は、「施工状況把握チェックシート」を使った現場の事例を、特別に公開します。
対話事例1:バイブレータの10cm挿入
東北復興道路に施工状況把握チェックシートを導入する直前に、横浜市の施工状況把握の研修や現場で見られた幾つかの協働的な対話の事例を紹介する。
チェックシートにある「バイブレータを下層のコンクリートに10cm程度挿入しているか」という項目については、施工者による様々な工夫が見られ、現場においても協働的な対話のきっかけとなる場合が多い。
目に見えない下層にバイブレータを10cm程度挿入しなくてはならないため、打ち込んでいる各層の厚さの管理は必須となる。バイブレータにカラーのビニールテープを目印に巻く工夫がよく見られるが、バイブレータの先端から遠くない位置に巻いていると、作業員から目印が見にくかったり、コンクリートで汚れて見えなくなったりする場合がほとんどである。
打込み作業の終了まで、この基本事項が遵守できるよう、テープの巻き方には様々な工夫がなされることとなる。テープ以外による方法も考案されるかもしれない。
横浜市にある調整池の現場での施工状況把握においては、バイブレータに複数のビニールテープが適切に巻かれていた。
どの層を締め固める際も、作業員の手元で型枠の天端にて挿入深さを管理するための工夫であった。協働的な対話の中で、後追いバイブレータの年輩の作業員は、「この方が単純作業となるので楽である」と話していた。
監督員が状況を把握しやすい施工方法は、作業員にとっても作業のしやすい方法である場合が多いようである。