(著)熱血ドボ研2030、(編)岩城一郎、石田哲也、細田暁、日経コンストラクション、定価:本体3,400円+税

 東日本大震災の被災地で、従来の方法にとらわれず、品質と耐久性にこだわったコンクリートを造ろうとする革命が起きています。

 革命の全貌について、大学の有識者、建設会社や道路会社の技術者など、第一線で活躍する当事者たちが書き下ろした書籍「新設コンクリート革命」が、3月20日に発行されました。

 この短期連載では、本書に掲載した内容の一部を紹介していきます。第1回は、品質確保システムの土台となる「施工状況把握チェックシート」の内容と効用について、特別に公開します。

監督行為を形骸化させないためにはどうすべきか?

図1■ 山口県で開発された施工状況把握チェックシート(東北での導入時のもの)
図1■ 山口県で開発された施工状況把握チェックシート(東北での導入時のもの)
(資料:山口県)
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 施工状況把握チェックシートは、山口県のひび割れ抑制システムにおいて開発されたA4判の1枚のシートである(図1)。

 同県では2007年のひび割れ抑制システムの運用開始に先立ち、06年にシステム運用を試行し始めた。当時は施工現場によって、段取りに大きな差があったのが現実であった。

 この状況に対して、発注者の監督員が施工状況を把握するためのチェックシートを開発し、システムの構築に関わったコンサルタントの技術者が全ての現場の打込みに立ち会う際にこのシートを試験的に使用した。

 山口県の担当者とコンサルタントの議論により、チェック項目を厳選し、A4判1枚に収めることを目標とした。膨大なノウハウが詰め込まれたコンクリート標準示方書などの規準類と、現場をつなぐ1枚のシートが開発されることとなったのである。

 「施工状況の把握」とは、監督員の行為の1つだ。ただし、把握すべき内容が監督要領などで具体的に示されているとはいえず、現場に出る監督員が少なくなる社会的趨勢の下、最も形骸化しやすい行為ともいえる。施工の主役は施工者であるが、監督員もこのシートを活用して、適切な施工がなされるための支援を行うこととなる。