地場の会社に活躍の場

 グリーンインフラではこれまで以上に、土地の条件や環境に応じたカスタムメードの事業が必要になるといわれ、地元事情に詳しい地場の建設会社にも活躍の場が見込めそうだ。もちろん仕事の受注には、発注者や住民のニーズ、地域が保有する自然資源を普段から把握しておく姿勢が必要になる。

 現状では、国内でグリーンインフラを意識して実施した事業はほとんどない。ただ、自然環境が有する様々な機能を生かした社会資本整備を進めた結果、前述した円山川のように多様な便益を発揮しているケースは少なくない(図4)。

図4 ■ グリーンインフラの多様な機能
図4 ■ グリーンインフラの多様な機能
取材をもとに日経コンストラクションが作成
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 産業界はグリーンインフラへの関心を高めており、事業の行方にエールを送る。一方で、行政の動きは芳しくない。それでもこの先、行政が正しく音頭を取らなければ、民間企業の行き過ぎた営利目的で「緑さえ生えていれば何でもあり」という誤った思想が根付く恐れがある。何よりも、グリーンインフラの特徴である多面的な計画・整備を実現するには、行政の協力が欠かせない。

 気候や風土の異なる欧米のやり方をそのまま輸入しても、うまく行かないのは目に見えている。「日本版グリーンインフラ」としての成功例を生み出すことが、結果的に概念を普及させるうえで近道となりそうだ。

日経コンストラクション2016年7月25日号の特集記事を再編したものです。文中の数値や組織名、登場人物の肩書などは取材、掲載当時のものです。第2回は2月23日(木)に掲載します。

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