分野横断の取り組みが必要

 これらの上位計画に記載され、グリーンインフラは国内の公共事業で無視できない存在となった。では、それに伴って実際にどんな仕事が増えるのだろうか。

 まず気になるのが、グリーンインフラの指す具体的な事業内容だ。直訳すると「緑の公共構造物」だが、対象は緑化したインフラそのものに限らない。例えば、水循環の機能を持つ貯留・浸透施設もグリーンインフラの一つといわれる。そのほか、多自然川づくりや遊水地、屋上緑化、浄化能力のある湿地、再生可能エネルギーなど、グリーンインフラを構成する要素は多岐にわたる(図1)。

 ただし、これらの構造物を個別に建設するだけでは、従来の事業と何も変わらない。グリーンインフラの実現には、地域全体の便益の最大化を目指して、複合的、多面的に計画・整備することがカギを握る。

 河川整備を例に取ると、河川敷内で事業を完遂するのが従来型だとすれば、敷地の内外をトータルにデザインすることで、様々な効果を生み出すのがグリーンインフラだ。従来、個別の事業で解決しようとしていた防災・減災、雨水循環、生物多様性保全などの課題に対して、横串を刺して一挙に解決するような効果を狙う。従来と異なり、分野横断的な取り組みが必要になる。

 グリーンインフラが先行する欧米では、定義が分かれる(図2)。例えば、米国環境保護庁(EPA)では、雨水貯留や水資源利用などの水循環を重視する。他方、欧州では生物多様性の保全に軸足を置いており、米国よりもグリーンインフラの定義をより広範に捉えている。

図2 ■ 欧米のグリーンインフラの特徴
図2 ■ 欧米のグリーンインフラの特徴
(写真:福岡孝則・神戸大学大学院准教授/資料:欧州経済社会委員会)
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