2016年度会計検査報告 事例解説
目次
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漁礁が埋没、魚育たぬ漁場に
漁礁の設計と施工が不適切
漁礁の整備事業で設置した投石礁や誘導礁が設計、施工ともに不適切だったために埋没などの不具合が発生。会計検査院から不当とされた。
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水深誤り係留アンカーが船と接触の恐れ
浮き桟橋の設計が不適切
海上自衛隊が整備した浮き桟橋の工事で、水深の設定を間違えたまま設計。潮位によっては、船底が係留するアンカーに接触する恐れがある状態になっていた。
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特定外来生物の侵入防止柵が転倒の恐れ
防止柵の設計が不適切
特定外来生物から島内の希少昆虫を守るために整備した防止柵が、設計時に風荷重を考慮しなかったため、風で転倒する恐れがある状態だった。
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擁壁の根入れ不足、確認せずに法面整形
擁壁の施工が不適切
新潟県が実施した擁壁工事が、会計検査院から根入れ不足を指摘され、不当事項となった。工事を担った施工者が、設計図書を十分に確認しないまま施工。擁壁の一部で所定の根入れ深さを確保できていなかった。
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ふとんかご前面に残土、排水目的なのに
水路復旧の施工が不適切
盛り土内に浸透する湧水などを速やかに排除するためにふとんかごを設置したのに、かごの前面に工事の残土を敷き均し、目的を果たせない状態になっている――。
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押さえ盛り土の盛り土せず、崩壊の恐れ
押え盛り土の設計が不適切
群馬県が手掛けた農村地域防災減災事業が、会計検査院から不当事項とされた。押え盛り土工事の設計が適切でなく、工事の目的だった崩壊危険箇所の安定化が達成できていないと判断されたからだ。
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田を湛水したら水路が浮き上がる恐れ
水路の設計が不適切
福岡県久留米市が実施した農業用施設の災害復旧事業では、水路の設計ミスが指摘された。地下水位からの揚圧力を過小に考え、浮き上がりに対する安全度を確保できていなかった。
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牛ふん尿貯留槽の構造計算をしなかった
貯留槽の設計が不適切
畜産施設整備事業の一環として築造した貯留槽が、設計ミスによる強度不足で不当とされた。構造計算をしていないなど、強度に対する検討が不十分だった。
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カルバートの粗雑工事で不同沈下
ボックスカルバートの施工が設計と相違
ボックスカルバートの施工ミス事案を紹介する。施工者が設計図通りに施工しなかったため、完成したボックスカルバートに不同沈下が生じ、ひび割れや剥離などの変状が発生した。
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水路に近接したガードレールが強度不足
ガードレールの設計が不適切
国道バイパス沿いに排水路とガードレールを整備したものの、ガードレールの設計ミスでどちらも強度不足となっている――。会計検査院が不当事項だと指摘した。
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受圧板の水切り分を考慮せず強度不足に
受圧板工の設計が不適切
法面保護のために設置した受圧板やアンカーの設計ミスだ。受圧板の形状を誤認したまま応力計算を行い、その誤りに気付かず設計し、施工していた。
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根固め敷設幅が過小、洗掘の恐れ
根固め工の設計が不適切
山口県が実施した護岸の復旧事業では、敷設した根固め工の設計ミスが指摘された。河川砂防技術基準を理解しないままに設計し、護岸の基礎を洗掘から保護できない構造となっていた。
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擁壁が根入れ不足、指針に基づかず設計
擁壁の設計が不適切
擁壁の設計ミスを2例指摘している。1つは鋼製のかご枠を積み上げた擁壁、もう1つは鉄筋コンクリート製の擁壁の設計ミスだ。ともに所定の「根入れ深さ」を確保していなかった。
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鋼材の干渉回避、再計算せず強度不足に
橋台の胸壁の設計が不適切
鳥取県が発注した橋の新設工事は、落橋防止構造の位置を変更した際、橋台の胸壁に作用する応力が増えることになるのに、応力計算をやり直さず強度不足となった。
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杭頭が「未補強」、基準改定を反映せず
汚水処理槽の基礎の設計が不適切
汚水処理施設の建設工事で生じた設計ミスだ。汚水処理槽の建設に際して耐震対策を講じたものの、準拠した基準の改定を設計に反映していなかったため、検査院から”補強は無効”との指摘を受けた。
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会計検査で設計ミスを多数指摘、1億円超えの無駄も
会計検査院は11月8日に2016年度の決算検査報告を公表し、不適切な支出など409件を指摘した。金額は合わせて874億円で、昨年度の1兆2189億円から大幅に減少した。