大規模地震に備える土木構造物の耐震補強や、2027年の開業を目指すリニア中央新幹線など、土木の仕事は人の生活や社会の活動を支える重要な使命を持つ。近年は、計画、設計、施工だけでなく、インフラの維持管理や運営といった新領域も守備範囲に入ってきた。

土木関連の主な仕事と就職先
土木関連の主な仕事と就職先
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 土木の仕事は、社会インフラにまつわるあらゆる場面にあり、しかも多彩だ。それを仕事の内容別に、できるだけシンプルに整理すると、「技術研究・技術開発」、「計画・調査・設計」、「施工」、「運営・維持管理」の四つに大別できる。当然、仕事の内容によって就職先も違ってくる。

 このうちの技術研究・技術開発には大きく進路が二つあり、仕事の中身も異なる。一つは、大学などの教育機関や、公的研究機関だ。学術性の高い基礎的技術の研究を中心に手掛ける研究者として働く。多くの場合、公務員だ。

 もう一つは、民間企業が持つ研究開発部門。総合建設会社や建材メーカーの技術研究所などが、それに当たる。ここでは、実際の構造物で採用することを前提とした実用的な材料や工法などの研究開発が主体になる。構造物を造る「現場」のニーズを理解する必要があるので、ずっと研究開発部門にとどまるのではなく、実際に構造物を造る工事事務所や、設計部門なども経験しながら、実務に長けた技術者としてキャリアアップしていくことが一般的だ。

専門分化したエキスパート

 世の中で土木というと、社会インフラを造る仕事というイメージが強いだろう。ひと口に社会インフラと言っても、道路や河川、橋、トンネル、ダム、都市開発など様々な種類がある。そして、それぞれに全く異なる技術やノウハウが必要で、各分野は専門分化されている。

 土木の仕事は、そうした専門性の高い技術をいくつも積み重ね、長い年月をかけて造られていくが、そのプロセスは「計画・調査・設計」と「施工」とに分けられる。

 前ページの図では、便宜上、計画から設計までをひとくくりにしているが、実際の業務は、各段階に分けて順次、実施される。整備するインフラの企画や候補地の選定といった計画段階、地質・地盤の調査といった調査段階を経て少しずつ具体化していき、設計段階で設計図面にまとめられる。

 土木事業のほとんどを占める公共事業の場合、計画段階は主に発注者の役割だ。そして、調査・設計の仕事は、建設コンサルタントを中心に進められることが多く、その建設コンサルタントも得意分野に特化した様々な会社がある。都市開発のマスタープラン作成や、交通計画の立案などに強い計画系コンサルタントもあれば、道路や河川といった各構造物の設計を得意とする会社もある。複数の分野を包括して手掛ける総合コンサルタントも、社内には専門分化したエキスパートを擁している。

各社が強みを持つ建設会社

 実際に構造物を造る施工段階に入ると、建設会社の出番を迎える。

 その建設会社もまた様々だ。全国展開する総合建設会社は、「スーパーゼネコン」と呼ばれる大手4社をはじめ、準大手、中堅、中小といったように規模別で分類されることが多い。そのほか、鋼製の橋梁や、特殊なコンクリート構造など、特定の構造物の設計・施工技術に長けた専門工事会社やメーカーがある。

 高速道路や長大橋、長大トンネルといった大規模プロジェクトの多くは、大手や準大手の建設会社などが「元請け」として工事を手掛ける。そのもとで、構造物の種類などに応じて、中小の建設会社や各専門メーカーなどが「下請け」として参画して、工事を担当する。

インフラ新設だけが仕事ではない

 先に述べたとおり、土木の仕事は大半が「公共事業」だ。地方自治体などが「発注者」として一連の業務を発注する。自治体などは、専門の技術者が少ないことが多く、事業全般を管理するが、基本的には図面を描いたり施工したりはしない。それらは、建設コンサルタントや建設会社などが「受注者」として担う。ただし発注者でも、国や高速道路会社、鉄道会社のように、専門の技術者を擁して、施工以外の業務を自らこなせるだけの技術力を持つところもある。

 今、土木の世界は、長く続いた「新設」から「維持管理」の時代へと本格的に移行しつつあり、その変革のなかでこれまでとは違う仕事が求められるようになっている。地方自治体をはじめとする多くの発注者にとって、社会インフラの「維持管理」と「運営」は悩みの種だ。

 今後、建設から50年を過ぎ、老朽化の見られる構造物は急増する。厳しい財政下でそれらを効率的に管理し、確実に点検や補修、更新を行うための計画の立案が、各方面で求められるようになってきた。PFI(民間資金を活用した社会資本整備)など、新しい形の事業も増えており、土木界の仕事の幅は多様な広がりを見せている。