対策変更でさらに56億円追加
問題は収束に向かうどころか、さらに迷走を続ける。大阪府が15年の議会で約56億円の増額を伴う安定対策の工法変更を提案し、同年12月に可決されたのだ。
大和川線の現場は地下水位が高く、数メートル掘ると水が出るほど。そこで、前述のように地下水位を下げてたて坑に掛かる水圧を下げる安定対策を採用したはずだった。
ところが、本線シールド機の発進時に地下水位を6mほど下げたところ、約800m離れた地点で地下水位が約1.5m下がってしまった。
「現場の地質は複雑だ。当初は周辺に影響がないと予測していたが、さらに詳細な調査を実施することにした」(府道路整備課建設グループの亀井敏晃課長補佐)。検討の結果、そのまま地下水位を低下させると、周辺の住宅地に地盤沈下を引き起こす恐れがあると判断し、府はこの対策を取りやめることにした。
代わりに選んだのは、開削区間の四隅への梁の追加と凍結工法だ(図2の3)。梁は、たて坑を支えるための補強策。凍結工法は、たて坑とその下部に設置した止水壁との接合部を凍らせて、掘削時の出水を防止するために採用した。地下水位を低下できなくなったため、たて坑の変位が大きくなり、止水壁にクラックが生じて出水する恐れがあるからだ。