7億5000万円の賠償を求めて提訴

 府は12年8月、掘削工事を一時休止した。そのうえで、周囲の地下水位を下げてたて坑背面に掛かる水圧を小さくし、延長200mもの仮設スラブを構築して2基のたて坑を支える「安定対策」を、有識者などから成る大和川線技術検討会での議論を踏まえて決定。対策に伴う工事費の増額案を議会にかけ、承認を取り付けた(図2の2)。

図2 ■ (2) 仮設スラブと地下水位低下による安定対策を採用(2013年12月)、工事を再開。日本シビックに約7.5億円を請求
図2 ■ (2) 仮設スラブと地下水位低下による安定対策を採用(2013年12月)、工事を再開。日本シビックに約7.5億円を請求
安定対策を追加し、約41億円分の増加に(検討費用も含む)。深さ約20mの遮水壁を設け、地下水位をNo4たて坑側で17m、No5たて坑側で12m下げる計画を立てた
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 吉田組JVとの契約は打ち切り、清水建設JVに安定対策や残りの工事を任せることに。この時点で、合計約242億円だった開削区間の工事費は約284億円に増えた。

 府は、たて坑の詳細設計を担当した日本シビックのミスが原因で約41億円もの増額を余儀なくされたと非難。14年6月、約7億5000万円の賠償を求めて大阪地裁に訴えを起こした。

 請求額は、増額後の工事費約284億円と、「連続ケーソン工法」に要する費用約278億円との差額である約5億7000万円に、年利5%の遅延損害金を加えて弾いた。連続ケーソン工法は、「設計ミスがなければ本来取り得た」と府が主張する工法。たて坑間に5基のケーソンを設置し、つないでトンネルとする方法だ。

 府の主張は大きく以下の2点。(1)日本シビックには、開削区間を掘削しても自立するたて坑を設計する義務があった、(2)側面を掘削すると、たて坑が滑動・転倒する恐れがあることを府に指摘する義務もあったがこれを怠った──。

 対する日本シビックは、(1)について「自立するたて坑を設計する契約ではなかった」と主張。(2)についても「成果品の納入後、府と施工者、設計者による会議で『大火打ち構造』によるたて坑の安定対策を検討・合意した。にもかかわらず、府が対策を実施せずに工事を進めた点に問題がある」などと真っ向から反論した。