梁端部の穴を柱の突起に差し込む

 清水建設の生産技術本部は、難易度が高い建築工事のサポートや、現場で必要となる技術の開発を担う部署。トップを務める印藤は入社以来、長く施工現場に身を置いてきた技術者だ。生産技術本部長に就任するまでは、シンガポール・チャンギ国際空港第3ターミナルの現場所長を務めていた。

 そんな印藤が率いるチームが提案した「かみ合わせるだけで柱と梁を接合する方法」とはどのようなものか。詳細を説明しよう。

 特徴は柱・梁のディテールにある。断面が1900mm角の柱の側面には、直方体の「突起」が上向きに取り付けてある。そして、幅が1900mm、梁せい(高さ)が2600mmの梁の端部には四角い形状の「穴」がうがたれている。この突起と穴をがっちりとかみ合わせることで、柱と梁を接続してしまおうというのだ。

柱側に突起を設け、梁の端部に空けた穴とかみ合わせて接合する。突起の上に角すい状のガイドを取り付け、梁の位置が多少ずれていても、自動的に正しい位置に導かれるようにした。東京電力ホールディングスの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成
柱側に突起を設け、梁の端部に空けた穴とかみ合わせて接合する。突起の上に角すい状のガイドを取り付け、梁の位置が多少ずれていても、自動的に正しい位置に導かれるようにした。東京電力ホールディングスの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成
[画像のクリックで拡大表示]

 突起と穴のすき間はわずか数ミリメートルで、いったんかみ合わせてしまうと容易には抜けない。地震などで部分的に大きな力が掛かって鉄骨が座屈したり、降伏したりする恐れがないように、解析して検証を重ねた。

 柱と梁をうまくかみ合わせるために工夫したのが、突起の上部に設けた角すい状のガイド。クレーンで梁を吊り込んだ際に、多少位置がずれていたとしても、穴がガイドに沿って突起の真上まで自動的に導かれる仕組みだ。

 四隅に置くカバーの柱も、凹凸をかみ合わせて組み立てる。具体的には、上の部材(凸部)を下の部材(凹部)に差し込んで継ぎ足していく。上の部材の先端にはテーパー(勾配)が付けてあり、組み立てやすいように工夫した。

上の部材を下の部材に差し込んで接続する。上の部材の先端にはテーパー(勾配)を付け、接続しやすくしている。東京電力ホールディングスの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成
上の部材を下の部材に差し込んで接続する。上の部材の先端にはテーパー(勾配)を付け、接続しやすくしている。東京電力ホールディングスの資料をもとに日経アーキテクチュアが作成
[画像のクリックで拡大表示]