東京電力福島第一原子力発電所の事故から、2017年3月で丸6年。読者の皆さんは、爆発する原子炉建屋を捉えた衝撃的な映像を、鮮明に記憶しているのではないでしょうか。一方、福島第一原発で今何が行われているかと聞かれて、説明できる人はかなり少ないかもしれません。

夜明け前の東京電力福島第一原子力発電所。写真中央右が1号機原子炉建屋。2016年11月10日撮影(写真:日経コンストラクション)
夜明け前の東京電力福島第一原子力発電所。写真中央右が1号機原子炉建屋。2016年11月10日撮影(写真:日経コンストラクション)
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 廃炉に向けて毎日6000人が働く現場では、様々な工事や作業が同時並行で進んでいます。その目的や内容を正確に理解しようとするだけで、大変な労力が伴うでしょう。燃料取り出し用カバー、凍土遮水壁、多核種除去設備、フェーシング――。耳慣れぬ用語の氾濫が、さらに理解を難しくしています。

 筆者はこれまで、主に建設会社の技術者に取材を重ね、廃炉に向けた作業の進捗をお伝えしてきました。ただし、断片的なリポートにとどまっていた点は否めません。

 そこで、1号機原子炉建屋に関する工事について、日経コンストラクションと兄弟誌の日経アーキテクチュアで報じてきた内容に加筆した上で再編集し、全7回に分けてウェブ上で連載することにしました。延々と続く工事のこれまでとこれからを、なるべく分かりやすくお伝えする試みです。連載は毎週火曜日を予定しています。

■連載の目次(予定)
第1回:異例ずくめの原発カバー工事が始まった
第2回:62パーツの“一夜城”
第3回:成功率100%が絶対条件
第4回:敵は放射能と「風」
第5回:「解体」は造るより難しい?
第6回:人馬一体で「針の穴」を通す
第7回:がれきに咲いた花

※タイトルは変更する可能性があります。

 他に類を見ない工事に挑んでいるのは、皆さんと何ら変わらない建設技術者です。彼らの物語には、苦境を打開するためのヒントがぎっしりと詰まっています。

 廃炉費用の増大が課題となるなか、国民として国のエネルギー政策や東京電力の振る舞いに関心を持ち続け、その是非を判断する一助にもして頂ければ幸いです。それでは、連載第1回をご覧ください。