計画堤防高に3.82m足りない、高潮リスクも

写真奥から2番め、3つの橋のうち最も手前の低い橋梁が阪神なんば線(写真:大野雅人)
写真奥から2番め、3つの橋のうち最も手前の低い橋梁が阪神なんば線(写真:大野雅人)
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 阪神なんば線淀川橋梁は、国が定めた大阪湾最低潮位(O.P.)から桁下までが4.28mで、計画堤防高「O.P.+8.10m」に3.82m足りていない。計画高潮位は「O.P.+5.20m」だから、高潮が発生すると、この橋のたもとから海水や河川水が流れ出し、伝法駅側の大阪市此花区エリアや、福駅側の大阪市西淀川区エリアの氾濫を引き起こす可能性がある。

阪神なんば線淀川橋梁と計画高潮位(赤線)の比較(資料:国土交通省)
阪神なんば線淀川橋梁と計画高潮位(赤線)の比較(資料:国土交通省)
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淀川下流域の高潮による破堤氾濫想定区域(資料:国土交通省)
淀川下流域の高潮による破堤氾濫想定区域(資料:国土交通省)
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 こうした危険性から、阪神なんば線淀川橋梁のたもとに、高潮時や洪水時に線路上の流入空間(高さ1.8m)をふさぐ陸閘・防潮鉄扉を設置している。

 阪神なんば線淀川橋梁は、破堤氾濫のほかに流下阻害というリスクもある。大正時代からの鉄道橋には39基の橋脚があり、径間長は15.8mと狭い。国で定められた河川管理施設等構造令と比較すると「橋脚数15基以下」に対し現状39基、「径間長50m以上」には15.8m、「流下阻害率5%以下」には10.2%、「桁下高8.10m以上」には4.28mと、これらの項目に適合していない。

 また、地震と地盤沈下による越水の危険性も指摘されている。阪神なんば線淀川橋梁と淀川堤防の交差部分は、堤内側の耐震対策が完了していない。南海トラフ巨大地震のようなレベル2地震動(最大級の強さを持つ地震動)が発生すれば、橋脚のたもとの地盤が沈下し、そこから河川水が流れ出る可能性もある。

阪神なんば線淀川橋梁の地盤沈下イメージ(資料:国土交通省)
阪神なんば線淀川橋梁の地盤沈下イメージ(資料:国土交通省)
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阪神なんば線淀川橋梁の堤防交差部にある防潮鉄扉(資料:国土交通省)
阪神なんば線淀川橋梁の堤防交差部にある防潮鉄扉(資料:国土交通省)
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 国交省近畿地方整備局は、高潮による破堤氾濫流は、梅田駅やJR大阪駅まで到達すると想定。その被害額は約2兆1900億円と試算している。