今年度に入って取り組みが本格化しているi-Construction。ドローンや情報化施工、CIMといったICT(情報通信技術)の活用に、どうしても目が向きがちです。しかし、i-Constructionで目指しているのはそれだけではありません。規格の標準化をはじめとしたコンクリート工の省力化も重要なテーマです。

 日経コンストラクション12月12日号では、そんな「ICTじゃない方」のi-Constructionに焦点を当てた特集「省力化で巻き返すコンクリート工」を企画しました。

日経コンストラクション2016年12月12日号特集「省力化で巻き返すコンクリート工」から
日経コンストラクション2016年12月12日号特集「省力化で巻き返すコンクリート工」から
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 コンクリート工の省力化でまず思い浮かぶのが、プレキャスト製品の活用でしょう。かなり昔から普及していますが、技術はどんどん進歩しています。特に最近では、「接合部の工夫」や「大型化」といったキーワードで、各社が開発を進めています。

 部材をプレキャスト化しても、部材同士の接合部で鉄筋を組み、コンクリートを充填する作業は残ります。その手間が課題になっていました。大林組は建築の技術も取り入れて、接合部も含めて「フルプレキャスト化」する技術を実用化しています。

 一方、現場作業効率化のために、部材を大型化するのも一つの方向性です。ただし、主に重量の面で、現場への搬入や据え付け時に制限が出てきます。それを回避するために、枠だけをプレキャスト化してコンクリートの充填を現場で行う「ハーフプレキャスト」の採用例も増えてきました。時間や手間の面で課題となりがちなコンクリート打設ですが、状況によっては積極的に利用するという方法もあるのです。

 さて、このように技術開発が進み、省力化の効果も大きいプレキャスト・コンクリートですが、採用に当たっての「壁」はまだ厚いようです。多くの人が指摘するのが、コストがかかる点。品質が良く、省力化が可能で、工期が短くなるとしても、高いものは選びにくいというわけです。

 ただし、この「高い」というのはあくまで直接工事費の部分。条件によりますが、工期短縮による間接工事費の削減分などを加味すれば、ほぼ同等になるという試算もあります。現在の積算で率計上としている間接工事費に関しては、直接工事費が高ければ間接工事費も高くなり、工期短縮のメリットが反映されないのです。プレキャスト製品の導入によって省力化を実現するには、積算や入札・契約の仕組みの見直しが欠かせません。