日経コンストラクション11月28日号では、特集「ドボクの魅力の伝え方」を企画しました。土木の広報は言わば「古くて新しい」問題で、その重要性や難しさについて、皆さんも感じる局面があると思います。特集記事では、日頃の広報活動のヒントにしていただきたく、先進的な取り組み事例を紹介しています。

日経コンストラクション2016年11月28日号特集「ドボクの魅力の伝え方」から
日経コンストラクション2016年11月28日号特集「ドボクの魅力の伝え方」から
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 今年の6月から9月にかけて、東京都内で「土木展」と題する展覧会が開催されました。ユニークな展示が話題を集め、1100円という入場料ながら、約6万人の来場者を数えました。その「仕掛け人」である西村浩・ワークヴィジョンズ代表のインタビューを、特集の冒頭に掲載しています。

 西村代表のインタビューを読むと、土木展が成功した秘訣は、最終的には西村代表のセンスと熱意にあったということが伝わってきます。特集記事ではこのほかにも、自治体をはじめとしたいくつかの広報事例を紹介していますが、いずれもやる気のある職員などが仕掛け人となって、組織をけん引していったことが読み取れます。広報活動に当たって、組織としての決めごとや手法のマニュアル化も重要ですが、成否を決めるのはやはり「人」なのです。

 話は変わりますが、この号では11月8日未明に発生した福岡・博多駅前での道路陥没事故について「NEWS焦点」でお伝えしています。岩かぶり2m(全体の土かぶりは18.8m)の地下に、NATMで大断面のトンネルを掘削している最中に、事故は発生しました。岩かぶりの薄さに配慮して、8月に設計変更を施していましたが、大陥没を防ぐことはできませんでした。記事では、現時点で分かっている事故原因について、詳細に報じています。

 そしてこの事故は、土木の広報を考えるうえでも参考になる事例でした。事故発生直後から高島宗一郎・福岡市長が積極的にテレビカメラの前に登場し、早期の復旧を約束しました。さらに市長は事故後、自身のフェイスブックに10回以上も投稿し、日々の作業の内容や復旧の見通しなどについて、事細かに発信しています。

 もちろん、市の発表資料に比べれば情報量は少ないわけですが、市長が自分の言葉で事故についての情報を発信する意義は大きいと思います。市長は元アナウンサーということもあって、情報発信の勘どころをしっかりと心得ていたのでしょう。

 先ほど、「広報の成否を決めるのは人である」と述べましたが、福岡市の一件でも、それを改めて認識しました。広報を担当するのは組織内の特定の人だけでなく、特に一般の人と関わる機会のある土木技術者は、一人ひとりが「広報マン」でもあります。広報や情報発信のセンスは、常に磨いておきたいものです。