「建設現場の生産性を、2025年までに20%向上させるよう目指します」。9月12日の第1回未来投資会議で、安倍晋三首相はこう述べました。未来投資会議は、政府の成長戦略を描く新しい司令塔となる組織。その場で首相自ら、現場の生産性向上に関する数値目標を宣言したわけです。

 国の号令の下、民間企業は慌ただしく生産性向上に動き始めました。このタイミングを捉え、日経コンストラクション11月14日号では特集「生産性狂騒曲」を企画しました。国の強力な後押しで過熱する「生産性向上ブーム」の実態と将来像を解き明かします。

日経コンストラクション2016年11月14日号特集「生産性狂騒曲」から
日経コンストラクション2016年11月14日号特集「生産性狂騒曲」から
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 「生産性20%向上」のための具体的な施策が、国土交通省の肝煎りで進められている「i-Construction」です。これまで本誌でもお伝えしてきたとおり、CIM(コンストラクション・インフォメーション・モデリング)をはじめとしたICT(情報通信技術)、ロボットなどの活用によって、建設現場の生産性を高めようという取り組みです。また、ICT活用にとどまらず、構造物の規格の標準化による施工効率の向上や、発注時期の平準化といった概念も含まれています。

 その中で、今号の特集では主にICTやロボットの活用に焦点を当てました。既に現場への導入が進んでいるドローンから、土木で使えるかどうかを模索している段階のAI(人工知能)まで、様々な技術について取材しています。どのような要素技術が世に出ているのか、技術開発はどんな方向に進んでいくのか、使えば効果がありそうなのか。動きが激しい分野の最新動向をつかんでいただけるようにまとめました。

 さて、この特集のそもそものスタートは、「ICT活用や機械化が究極まで進んだ時、建設産業で働く人の仕事はどう変わるのだろうか」という素朴な疑問でした。例えば、土木の仕事はAIやロボットに置き換えられるのか――。

 特集記事に合わせて読者にアンケート調査を実施したところ、「部分的に」も含め、置き換えられると思っている人が全体の7割弱に達しました。あなたの仕事はどうでしょうか。特集記事をお読みいただき、自分の仕事の行く末について考えるきっかけにしていただければと思います。