建設産業では、相変わらず人材不足に悩んでいます。学校で土木を学びながらも他産業に就職する学生が多く、新卒者の確保に多くの企業が苦労しています。

 ただ、こうした状況のなかであえて建設産業に入職する人は、建設産業への強い思いを持っている人が多いという話を、大学や企業の関係者から耳にすることがあります。初めから目的意識を持って仕事に臨んでいる彼らは、おのずと上司や取引先からの評価が高く、若くして頼られる存在に成長しています。

 日経コンストラクション11月9日号では、建設会社、建設コンサルタント会社、発注機関で「評価されている」若手技術者にスポットを当て、その活躍ぶりを紹介する特集「若手の成長株」を掲載しました。

日経コンストラクション2015年11月9日号特集「若手の成長株」から
日経コンストラクション2015年11月9日号特集「若手の成長株」から
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 ただ、「評価される」とは、どういうことなのでしょうか。特集記事でコメントしているハタコンサルタントの降籏達生代表は、次のように言います。「人間性の良さや技術力で評価されたのか、それとも協力会社の言いなりになるような甘さで得た評価なのか――」。もちろん、前者でなければならないと。

 建設の仕事は、異なる会社や組織に属する多くの人が一緒にものを造り上げていきます。建設会社の現場で働く若手なら立場上、年上の協力会社の職長に対して指示を出すケースも多いでしょう。その際、職長の言いなりにならず、元請けの立場で毅然と対応できるのか。かつ、一方的に自説をまくし立てるのではなく、相手の主張に耳を傾けつつ、自分の意見を聞き入れてもらえるような接し方ができるのか。

 特集記事の冒頭で紹介した清水建設の関雅人氏は、30歳にしてこうしたスキルを身に付けて活躍しています。最盛期には技術者と職人を合わせて250人に達する大現場で現業主任を務める同氏は、年上の主任や職長から絶大な信頼を得ているといいます。特集記事では関氏を含め、社内や発注者、近隣住民などから評価されている9人の若手の仕事ぶりを取り上げました。

 建設産業で働く若手の方には是非この記事をお読みいただき、同世代の頑張りから元気をもらい、周囲からの信頼を得ていくためのヒントをつかみ取っていただければと思います。一方で、先輩や上司に当たる方には、若手がどんなことを考えながら仕事に当たっているのかを知っていただくとともに、若手が周囲からの評価を高められるような仕事の任せ方について、考えるきっかけにしてもらえればと思います。