10月1日、愛知県内の有料道路8路線で、民間企業による運営が始まりました。官が所有権を持ったまま、運営権を民間に移す「道路コンセッション」の第1号となる事業です。早速、中部国際空港連絡道路の通行料を半額にするなど、利用者へのメリットを打ち出しています。

 新たに道路の運営を始めたのは、愛知道路コンセッション(愛知県半田市)。前田建設工業を筆頭に、森トラスト、大和リースなどが出資するSPC(特別目的会社)です。運営権者の選定には、この前田グループのほか、大林組、八千代エンジニヤリング、オリエンタルコンサルタンツなどが加わったグループも参加しました。また、前田建設工業は、やはり今年から民間による運営が始まった仙台空港でも、運営を担うSPCである仙台国際空港(宮城県名取市)に出資しています。

 このように、建設会社や建設コンサルタント会社は、急速に立ち上がってきたコンセッション市場に熱い視線を注いでいます。とはいえ、参加している会社はまだごく一部。多くの人は、名前こそ聞いたことはあっても、事業の仕組みや参入するメリットについてよくご存じないのではないでしょうか。

 そこで、日経コンストラクション10月24日号では、特集「動き出すコンセッション」を企画。具体的な事例を交え、コンセッションの仕組みや市場規模、建設関連企業の関わり方などについて解説しました。

日経コンストラクション2016年10月24日号特集「動き出すコンセッション」から
日経コンストラクション2016年10月24日号特集「動き出すコンセッション」から
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 インフラの運営という意味では、これまでも包括的民間委託や指定管理者制度によって、建設関連の企業が参画する例が珍しくありませんでした。ただし、これらの事業では運営業務を受託するだけなので、金額が小さく、大きなビジネスにはなり得ませんでした。一方、コンセッションはハイリスク・ハイリターンと言えるでしょう。例えば愛知県の有料道路の場合、公社が事前に予測した料金収入の上振れ6%までは民間の取り分となります。逆に、下振れした場合も、6%まではSPCがリスクを負わなければなりません。

 ただし、SPCでは、この「プラス6%」より多くの収入を見込めると判断。SPCの取り分を増やせるのであれば運営権対価を引き上げるとする提案も公社に提出しています。地元観光協会との連携や工事の時間帯の工夫による渋滞抑制によって、交通量を増やせるとみているのです。建設事業で培ったノウハウを最大限活用できれば、それだけ収益を上げることができる――。これがコンセッション事業の魅力にほかなりません。

 政府が今年5月に決定した「PPP/PFI推進アクションプラン」では、2022年度までにコンセッション事業の市場規模を7兆円にする目標を掲げています。今後、建設投資の伸びが期待できないなかで、これだけの規模の市場が目前にあるのです。請け負いではなく自ら事業者になるわけですから、建設投資の多寡に左右されない事業とも言えます。

 これまでも、建設業界の景気が悪くなるたびに、合い言葉のように「脱・請け負いを目指そう」と言われてきましたが、各社の事業としてはなかなか定着しませんでした。一方、国を挙げて市場拡大をもくろむコンセッションは、建設関連企業の“メシの種”になるのか。長い目で、注目していきたいと思います。