2014年に義務付けが決まった橋梁の定期点検。まずは18年度までの5年間に、全国約70万橋の点検が行われます。14年度中に実施されたのはそのうち8%で、残りの9割以上は今年度以降に点検が行われます。

 規模の大きい、あるいは構造が特殊な橋の点検は、自治体の職員の手に余るでしょう。おのずと、技術力のある建設コンサルタントなどに点検を委託することになります。一方、例えば橋長2m程度の小さな橋なら、構造も単純で、あまり経験のない職員でも点検できそうに思えます。それらの橋は数が膨大なことから、予算面も考慮して、実際に自治体の職員が点検を行うケースは少なくないようです。

 点検は、調査や補修工事に比べれば難易度が低そうですが、慣れていない人が行うのはそう簡単ではありません。“意外な”落とし穴も存在します。

 点検が全国で本格化するなか、経験が少ない人が点検に臨む際の指針にしていただければと考え、日経コンストラクション10月12日号では、特集「橋梁点検“超”入門」を企画しました。

日経コンストラクション2015年10月12日号特集「橋梁点検“超”入門」から
日経コンストラクション2015年10月12日号特集「橋梁点検“超”入門」から
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 点検の落とし穴と言えば、見るべき部位を見ていない、劣化があるのに見落とした、といったことが考えられます。しかし、実はそのさらに手前に大きな落とし穴があります。その一つが「安全管理」です。

 例えば、河川に架かる橋の点検では、目視のために川に入らなければならない場合もあります。では、どんな格好で水に入れば安全なのか。また、上流でゲリラ豪雨があった時、どうやってそれを察知し、退避すればいいのか。小さい橋だからと油断していると、思わぬところで文字通り足元をすくわれかねません。過去には、橋の点検の際に死亡事故が発生したケースもあります。

 特集記事では、こうした点検時の安全管理の要点に加え、橋の部位別に見るべきポイントをまとめました。これまで2回、本誌に登場した「老朽橋探偵&K助手」とともに、点検の「イロハ」を学びましょう。