日本の建設投資は、ピークだった1992年度の84兆円から減少傾向が続き、2010年度には42兆円と半減しました。ご存じのとおり、その後は震災復興や安倍政権の経済政策によって反転し、最近では50兆円弱まで盛り返しています。

 建設会社の決算も、当然のことながら建設投資に連動し、ここ3年で急速に回復しています。2014年4月~15年3月に迎えた決算期の各社の決算は、好調ぶりが際立ちました。日経コンストラクション9月14日号では、特集「建設会社決算ランキング2015」を企画し、決算内容を分析するとともに、各社の経営戦略についてまとめました。

日経コンストラクション2015年9月14日号特集「建設会社決算ランキング2015 際立つ増益ラッシュ」から
日経コンストラクション2015年9月14日号特集「建設会社決算ランキング2015 際立つ増益ラッシュ」から
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 最近の好業績を支えてきた震災復興関連事業ですが、震災から5年目を迎え、やや陰りが見えてきました。今回の調査でも、回答者の9割以上が、次期(15年4月~16年3月に迎える決算期)において、復旧・復興に関する受注高は「増加しない」と考えています。

 とはいえ、好材料もまだまだ多くあります。東京五輪に向けた首都圏のインフラ整備をはじめ、大型工事の発注ラッシュが続きます。首都圏3環状道路やリニア中央新幹線、高速道路の大規模更新など、大手建設会社が注目する工事が目白押しです。一方で、大規模な事業に伴う周辺工事や高速道路の修繕などは、小規模な会社にも手掛けるチャンスが大いにあります。

 明るい見通しの中で、その先を見据えた手を打ち始めている会社も多く、特集記事ではそうした将来に向けた「投資」についても焦点を当てています。さらなる受注を目指して新組織や新会社を立ち上げる企業もあれば、人材を確保するための待遇改善に力を入れているところもあります。特に、自社の社員だけでなく、協力会社の優秀な社員を優遇する動きがこのところ目立ちます。

 業績が良くなって「ほっと一息」というのが本音かもしれません。しかし、先の民主党政権時代がそうだったように、建設投資が一気に減る可能性はゼロとは言えません。業績のいい今のうちに、どれだけ将来に向けた投資ができるのか。景気が悪くなった時に、大きな差になって表れます。