連日のリオデジャネイロ五輪に関する報道を見ていると、東京五輪までの期間がわずかしかないことを改めて感じます。建設産業では建築分野を中心に、今後2~3年は大小様々なプロジェクトが目白押しです。

 一方、土木分野ではどうでしょうか。建築に比べて五輪に直接絡む事業は少なく、恩恵は少ない印象です。その代わり、五輪後まで続くプロジェクトが数多く動き出しています。一つが、東京外かく環状道路(外環道)や首都圏の鉄道網といった周辺インフラの整備。そしてもう一つが、インフラのリニューアルです。

 例えば、1964年の東京五輪を目指して造られた首都高速道路は、完成から50年以上を経て、大規模更新・修繕事業が動き始めました。東日本・中日本・西日本の各高速道路会社でも、総額3兆円に上るリニューアル工事が今年度から本格化しています。土木を手掛ける建設会社は、これらの市場に熱い視線を注いでいます。

 新しい市場が生まれれば、そこに新しい技術が生まれます。日経コンストラクション8月22日号では、特集「維持・補修2016 リニューアルのヒット工法」を企画しました。

日経コンストラクション2016年8月22日号特集「リニューアルのヒット工法」から
日経コンストラクション2016年8月22日号特集「リニューアルのヒット工法」から
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 従来から指摘されているとおり、維持管理や補修・補強関連の工事は、新設工事に比べて多くの制約が伴います。阪神大震災や東日本大震災をきっかけに橋の耐震補強は著しく進展しましたが、必要な対策の全てが終わったわけではなく、技術的に補強が難しい箇所では遅れ気味です。特集記事では、そうした難題を乗り越えた補修・補強の新技術を取り上げました。

 難題を解決するには、従来の土木技術の枠を取っ払って考えることも必要です。特集記事で紹介したJR東海道本線のれんが橋脚の耐震補強では、主に建築に使われていた制震ダンパーを利用することで、河積を阻害せず、かつ安価で対策を実施しました。近鉄四日市駅のRC(鉄筋コンクリート)橋脚の耐震補強では、建設会社と材料メーカーが速硬型の無収縮グラウトを新開発し、巻き立て作業に要する日数の半減に成功しています。

 補修・補強に限らず、土木技術者には常に難題の解決が求められています。社会からの期待に応えるには、建築や材料、機械、ICTといった異分野との協業が、これまで以上に欠かせなくなります。土木の殻に閉じこもらずに、異分野の技術の動向にも、日ごろから目配りしておきたいものです。