熊本地震の発生から1カ月がたち、新幹線や高速道路といった“大動脈”の復旧は迅速に進みました。一方で、被害があまりにも大きく、取り残されたような格好になっているのが、大規模な地盤被害が生じた阿蘇周辺です。日経コンストラクション5月23日号では、被害のメカニズムを明らかにすべく、「追跡・熊本地震 なぜ阿蘇は崩れたか?」を掲載しました。

日経コンストラクション2016年5月23日号「追跡 熊本地震」から
日経コンストラクション2016年5月23日号「追跡 熊本地震」から
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 本誌の真鍋政彦記者が往復12kmの道のりを歩いて取材した俵山トンネルの崩壊、京都大学火山研究センター付近の大規模な地すべりなど、一般のメディアであまり報じられていない被害の状況と、そのメカニズムをお伝えしています。火山地域特有の地質と断層変位によって、比較的狭い範囲の中でも様々な地盤被害のパターンが見られることが分かりました。

 また、特集は「挑戦の防災」と題して、地震に加え、豪雨や土砂災害などによる被害を抑制するための技術についてまとめました。

日経コンストラクション2016年5月23日号特集「挑戦の防災」から
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 これまでも防災事業は着々と行われてきましたが、熊本地震でもそうだったように、全ての被害を防ぐことはできていません。しかし、大きな災害に遭うたびに、土木技術者はそれを教訓として新たな技術を生み出し続けています。記事では、液状化対策や構造物の耐震化などに当たって、これまでにない考え方や技術を採用した実例を取り上げました。現場で実施してみて課題があるのも現実ですが、従来は解決できなかった難題に新発想で挑んだことに、拍手を送りたいと思います。

 さて、熊本地震の被害をお伝えしているなか、土木分野では立て続けに二つの重大な出来事がありました。一つは、新名神高速道路・有馬川橋の桁落下による死亡事故。もう一つが、羽田空港の地盤改良工事における施工不良の発覚です。土木技術者の皆さんは、いずれも「なぜこんなことが…」と感じたのではないでしょうか。5月23日号では第一報をお伝えしていますが、これらについても今後、詳しい状況が分かり次第、ウェブサイトと本誌でお伝えしていきます。