日本が誇る長大橋やシールドトンネルの建設技術。これらの多くは、明石海峡大橋や東京湾アクアラインといった条件の厳しいプロジェクトをターゲットに開発されてきました。土木分野では、こうした難条件のプロジェクトこそが技術開発を進める原動力だったと言えるでしょう。

 21世紀に入り、大型プロジェクトはなりを潜めていましたが、東京五輪を目前に控えた今、様々なプロジェクトが胎動し、技術開発も活気を帯びています。日経コンストラクション1月25日号では、前号に引き続き、特集「2016年の土木界」の後編をお届けします。切っても切れない関係にある「プロジェクト」と「技術」に焦点を当て、今年の動きを予測しました。

日経コンストラクション2016年1月25日号特集「2016年の土木界・後編」から
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日経コンストラクション2016年1月25日号特集「2016年の土木界・後編」から

 新設のプロジェクトでは、東京外かく環状道路(外環道)の都内区間やリニア中央新幹線の工事が本格的に始まります。いずれも、トンネル関連の技術が注目されています。

 外環道では、外径16mに及ぶ本線トンネルを掘削したうえで、本線とランプのトンネルが合流する地中拡幅部を建設します。地中拡幅部の建設は、高圧下においてトンネルを非開削で切り広げるというかつてない難工事です。既に12の工法が開発され、工事発注に向けた準備が進められています。

 一方、リニア中央新幹線では、延長約25km、最大土かぶりが約1400mに達する南アルプストンネルをはじめ、厳しい地質条件の下、長大なトンネルを築きます。掘削方法だけでなく、前方探査や地山の挙動管理などの技術開発に、各社はしのぎを削っています。

 既設構造物を対象としたプロジェクトで注目されるのは、高速道路の大規模更新・修繕。なかでも、現場条件の制約が大きい首都高速道路や阪神高速道路の工事は長期戦になります。プレキャスト化や継ぎ手構造の工夫といった、施工時間を少しでも短縮する技術の開発が進んでいくでしょう。

 もう一つ、昨年後半から国と業界が総力をを挙げて取り組んでいる「生産性の向上」も、技術開発の原動力になりそうです。生産性向上は人手不足の解消策になるだけでなく、労働環境の改善にもつながります。プレキャスト化、ICT(情報通信技術)の活用など、様々なアプローチでの技術開発が期待されます。