東日本大震災の復興事業が本格化し始めた2011年末ごろから、建設産業の人手不足がクローズアップされました。当初、課題とされていた作業員不足が落ち着いてきた今、顕在化しているのが建設技術者の不足です。厚生労働省の発表によれば、2017年11月の「建築・土木・測量技術者」の有効求人倍率は6.38倍と、震災発生以降、最高を記録しました。

 建設会社や建設コンサルタント会社は、手薄な40歳前後の技術者を確保しようと中途採用に躍起になっています。建設産業でも、転職市場が盛り上がってきました。

 採用で重視されるのは業務経歴や人柄など、様々な要素がありますが、土木の世界で無視できないのはやはり「資格の有無」ではないでしょうか。日経コンストラクション2月12日号では、特集「資格で開く新天地」を企画し、資格を携えて転職に成功した11人の技術者のサクセスストーリーを描きました。

日経コンストラクション2月12日号特集「資格で開く新天地」から
日経コンストラクション2月12日号特集「資格で開く新天地」から
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 転職に有利な資格といえば、建設会社へ行くなら一級土木施工管理技士、建設コンサルタント会社なら技術士(建設部門)といったあたりが一般的ですが、それだけではありません。

 例えば、準大手の建設会社から大成建設に転職した大西雅也氏は、一級土木施工管理技士のほかにJR工事管理者(在来線、新幹線)の資格も保有。駅周辺の再開発など鉄道工事が相次ぐなかで、貴重な資格保有者として重宝されています。ある建設コンサルタント会社からパスコに転じた小俣雅志氏は、技術士(応用理学)の資格に加え、全国地質調査業協会連合会が創設した応用地形判読士の資格も取得しており、50代での転職を成功させる決め手となりました。

 建設市場の縮小に伴って、最近では事業分野の拡大を目指す企業が増えています。そうした分野の資格保有者は希少価値が高く、面接官の目にも留まりやすいでしょう。転職先のニーズと合致すれば、ニッチな資格の方が転職に有利になる場合もあるのです。

 資格はあくまで“免許証”にすぎず、持っているからといって技術力が保証されているわけではありません。とはいえ、資格がなければ「頑張ります」としか言えないところ、資格を持っていれば「頑張れます」と言えるでしょうし、面接官にも納得してもらえるはずです。特集記事の巻末では、技術士、コンクリート診断士をはじめとした20の資格の取得ガイドも掲載しています。今すぐ転職を考えていない人も、将来に向けて、新たな資格の取得にチャレンジしてみてはいかがでしょうか。