日本建設産業職員労働組合協議会(日建協)が2016年に実施した調査によれば、建設業従事者が建設業界に「魅力を感じない」理由の第2位に、「前近代的体質が残っている」が挙がっています(1位は「労働時間が長い」)。建設業界では担い手の確保に本腰を入れていますが、若手を呼び込むには、労働時間や給与といった制度面の見直しだけでなく、旧来の体質の改善が欠かせません。

 こうしたなかで、業界に新風を吹き込もうと奮闘する土木技術者がいます。また、最近では建設産業と他産業の協業が進んできたのに伴い、土木の「外」にいる人が業界に変化をもたらす例も出てきています。日経コンストラクション1月22日号では、業界の内外から土木を変革しようと挑む10人の「テクノロジスト」に焦点を当て、彼らの仕事の流儀と、変革に懸ける思いについて語ってもらいました。題して、特集「俺たちが土木を変える!」。

日経コンストラクション2018年1月22日号特集「俺たちが土木を変える!」から
日経コンストラクション2018年1月22日号特集「俺たちが土木を変える!」から
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 立場も得意とする分野もバラエティーに富んだ10人ですが、共通しているのは、そうした立場や分野を越えて、新たな価値の創造にチャレンジしている点です。

 特集の冒頭で取り上げた宇宙航空研究開発機構(JAXA)の金森洋史氏は清水建設から出向し、月にある材料だけを使ってコンクリートを作る技術や、遠隔施工ロボットによる建設技術などの研究・開発に取り組んでいます。既に、開発したロボット技術が地上の建設現場で活躍するなど研究の成果が現れていますが、金森氏が目指しているのはあくまで「人類の月への移住」。それが可能になった暁には、建設会社の活躍の範囲が大きく広がると夢を描いています。

 ネクスコ・ウエストUSA社長の松本正人氏は、西日本高速グループが培った非破壊検査技術を武器に、米国に進出。6年で、州発注の橋梁点検業務を元請けで受注するまでになりました。進出直後は無償で実績を積み重ねつつ、赤外線カメラのトップメーカーとのパートナー契約も結び、それまで存在しなかった米国の「赤外線による点検市場」を切り開きました。松本氏は、自らを日本人メジャーリーガーのパイオニアになぞらえ、「エンジニアの世界の野茂英雄になりたい」と意気込みます。

 そのほか、「建設機械『自動化』の先駆者」、「アフリカ仕込みの街づくり請負人」、「第2の企業で挑む“日本語入力の父”」など、様々な場面で挑戦を続けるテクノロジストを取り上げました。彼らの言葉が、皆さん一人ひとりが土木を変革するための刺激になればと思っています。