政府の大号令の下、国を挙げて生産性向上の機運が高まっています。少子高齢化による人手不足が進行するなか、働き方改革を実現しようと思えば、生産性を高めるほかありません。建設分野では、2025年までに現場の生産性を2割高める目標が掲げられています。

 その具体策であるi-Constructionは、石井啓一国土交通大臣の表明から丸2年が経過し、だいぶ現場に浸透してきたように思えます。しかし、多くの会社や技術者が取り組んでいる理由は「国が推し進めるから」ではないでしょうか。日本の建設産業では生産性向上の成功事例がまだ少なく、自発的に取り組もうにも、何をすれば生産性が高まるのか、具体的に思い描くのは難しいのが実情だと思います。

 そこで日経コンストラクションでは、海外に活路を求め、12月25日号で特集「世界を席巻! 生産性革命」を企画しました。記者が海外の現場に赴き、生産性向上に役立つ実例を取材しました。

日経コンストラクション2017年12月25日号特集「世界を席巻! 生産性革命」から
日経コンストラクション2017年12月25日号特集「世界を席巻! 生産性革命」から
[画像のクリックで拡大表示]

 特集記事で注目したのが、まずは東南アジア。各国で大型のインフラ整備事業が活発ですが、経験豊富な作業員を集めるのが難しいので、品質が安定するプレキャスト部材を大量に使う例が出始めています。

 例えば、タイの首都バンコクでは、新たなターミナル駅「バーンスー中央駅」を建設中です。ここでは、南北600m、東西150mに及ぶ巨大な高架構造について、柱や梁、桁などほとんどの部材をプレキャスト化しています。大幅な工期短縮が必要だったことから、柱と梁はそれぞれ4種類、最も多い箱桁でも10種類の部材の組み合わせで全ての箇所を施工できるように、徹底的な規格化を図りました。品質を安定させる効果も大きかったと言います。

 もう1つは欧州です。こちらは、最先端のテクノロジーの導入によって生産性向上に挑戦しています。オランダでは、「3Dコンクリートプリンター」で造った世界初の歩行者・自転車橋が、この10月に開通しました。型枠の制約を受けずに自由な形が造形できるので、従来は施工が難しかった合理的な構造の橋を、人手をかけずに造れるようになるかもしれません。

 日本は、建設従事者1人1時間当たりの労働生産額は他国に比べて悪くありませんが、その伸び率は、東南アジアの多くの国や、英国、オランダ、ベルギーなどに後れを取っています。生産性の面で成長を続けるこれらの国の取り組みに、学ぶべき点は多そうです。