建設投資の好転で、建設会社や建設コンサルタント会社の多くが好調な決算を記録しています。「過去最高益」を達成した会社も少なくなく、建設会社の倒産件数は8年連続で前年を下回りました。

 一方、その裏側では深刻な問題も進行しています。例えば、人材不足。特に中小企業の場合、単に仕事が回らなくなるのにとどまらず、後継者の不在が原因で会社を休廃業・解散せざるを得ないケースも目立ってきました。

 こうしたなか、社業が好調なうちに「次の一手」を打ち始めた会社もあります。日経コンストラクション11月27日号では、先を見据えて手を打ち、現場の競争力を磨いたり、得意な技術で市場を席巻したりしている会社を訪ね歩き、特集「10人の社長激白!我が社が元気な理由」をまとめました。

日経コンストラクション2017年11月27日号特集「10人の社長激白!我が社が元気な理由」から
日経コンストラクション2017年11月27日号特集「10人の社長激白!我が社が元気な理由」から
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 例えば、橋の補修・補強に強みを持つ小野工業所(福島市)は、建設産業ではあまり進んでいないM&A(合併・買収)によって会社の体質を強化しています。鉄骨工事や鋼材加工を手掛ける会社を中心に5社を子会社化し、労働力と技術力を確保。各社の原価管理を自社の水準まで強化することで、営業利益を大幅に高めています。買収した会社の中には後継者問題に悩んでいたところもありました。

 さいたま市のエム・テックは、事務職の活用で生産性を高めているのが特徴です。事務職の女性社員を訓練して現場事務所に配置し、経理などだけでなく、CAD図面の修正や写真整理の作業も任せています。その分、技術者の負担が減り、土木施工管理技士などの資格を持つ技術者1人当たりの売上高が、4年間で1.6倍に向上しました。特集記事ではこれらの会社を含め、建設会社6社、建設コンサルタント4社の事例をまとめています。

 バブル景気に沸いた1980年代後半、少なからぬ建設会社が海外の不動産投資に傾注し、その後のバブル崩壊で深い痛手を負いました。業績が好調な時期に、将来を見据えた投資をすることは必要ですが、お金の使い道を誤れば会社の存続すら危ぶまれます。その点、人材育成や会社の体質強化への投資は、一見“地味”ではありますが、大きなリターンにつながるものです。