今からちょうど20年前、日経コンストラクションの1997年10月24日号に、「建設ベンチャーのすすめ」というトピックス記事が掲載されています。新興の建設会社が仮設資材や床版、地盤改良などの新工法を開発し、業績を伸ばしている――といった内容でした。

 ただし、建設業、特に公共事業をメーンとする土木分野では、ベンチャー企業が根付くのは難しいとよく言われます。特殊な技術を開発しても他社との差別化を図りにくい点や、技術開発に大掛かりな設備とふんだんな資金が必要になるといった点が理由でしょう。実際、前述の記事で取り上げた中にも、ほどなくして経営破綻した会社がありました。

 ところが最近、建設業の周辺で、新たなベンチャーの波が起こっています。それらの企業は「スタートアップ」と呼ばれますが、スタートアップとは一体何だ? 日経コンストラクション2017年10月23日号では、特集「敵か味方か『建設スタートアップ』」を企画しました。

日経コンストラクション2017年10月23日号特集「敵か味方か『建設スタートアップ』」から
日経コンストラクション2017年10月23日号特集「敵か味方か『建設スタートアップ』」から
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 スタートアップとは、ベンチャーの中でも革新的な技術やサービスを生かして急成長を目指す企業を指す言葉で、最近はニュースなどで耳にする機会が増えてきました。そうした企業が今、建設の分野でも生まれ、活躍の場を広げようとしています。

 従来の建設ベンチャーは、建設会社から独立した技術者が別の建設会社を興し、新開発した材料や施工方法を売り物にするという例がほとんどでした。それに対して最近のスタートアップは、ICT(情報通信技術)に詳しい技術者が創業し、企業間マッチングや仕事の生産性向上を通じて建設業の支援を目指しているのが大きな違いです。特集記事では、建設業界からIT業界に転じ、スタートアップを立ち上げた創業者も紹介しています。建設技術者の独立といえば、建設会社や建設コンサルタントの創業、あるいは技術士事務所の開設といったところが代表的ですが、今後はIT分野での起業という道もありそうです。

 とはいえ、ベンチャーに縁遠かった建設分野の人にとって、「スタートアップ企業はどこまで信用できるのか」という思いもあるでしょう。確かに玉石混交ではありますが、清水建設や前田建設工業などの大手建設会社が、共同開発のパートナーに選んだり、スタートアップに出資したりする例も出てきています。ベンチャー・キャピタルから億円単位の出資を得ているスタートアップも存在します。「食わず嫌い」せずに、建設業の周辺に現れた新興勢力に、目を向けてみてはいかがでしょうか。