インフラを整備する目的とは何か。インフラの種類によっても異なりますが、メーンとなるのは安全性の確保と利便性の向上でしょう。一方、インフラの整備によって新たな需要の喚起を狙う場合もあります。例えば、新幹線や高速道路は多くの場合、利用者の利便性を高めるのに加え、駅やインターチェンジの新設による地域人口の増加や産業の集積を意図しています。

 とはいえこのご時世、大規模なインフラを整備して地域の起爆剤にするというのは現実的ではありません。そこで、小規模なインフラ、または既存のインフラの価値を見つめ直そうという機運が高まっています。インフラのデザインや造り方、使い方を工夫することで、地域に新たなインパクトを与えようという考え方です。

 日経コンストラクション9月25日号では、特集「インフラから始める地方創生」を企画し、埋もれたインフラの価値を掘り起こして地域振興に役立てている事例を取材しました。

日経コンストラクション2017年9月25日号特集「インフラから始める地方創生」から
日経コンストラクション2017年9月25日号特集「インフラから始める地方創生」から
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 一番大きく取り上げたのが、今年2月に架設された長崎市の出島表門(おもてもん)橋の事例です。江戸時代に日本と「外国」をつないでいた旧出島橋と同じ場所に架かる橋だったことから、デザインや構造の面で工夫を凝らし、さらに架設そのものを「お祭り」として仕立て上げました。発注者、設計者、施工者が一体となり、市民を巻き込んだ事業の進め方は、他の事業でも参考になるでしょう。

 これは、有名な観光地だからできた取り組みかもしれませんが、特集記事で取り上げたのは著名な物件ばかりではありません。JR北海道の秘境駅である小幌(こぼろ)駅を生かした地域振興、マンホールの蓋を一般の人に売り出した前橋市など、インフラの意外な魅力に気付き、それを生かした取り組みはあちこちにありました。

 話は変わりますが、インバウンド需要の喚起に向けて、外国人を呼び込むための取り組みが日本各地で行われています。なかには、「日本の家庭料理を作って食べる」、「稲刈りと餅つきを体験」、「浴衣を着て盆踊り」など、名の知れた観光地でなくてもできるイベントで外国人観光客の誘致に成功している例もあります。要は、知恵の使い方です。特集記事をお読みいただき、インフラのポテンシャルについて、改めて考えてみてはいかがでしょうか。