ここ数年、建設会社の業績の好調ぶりが目立ちます。業績を表す指標を見ると、他産業に追い付き、追い越すものも出てきました。例えば、売上高営業利益率。2000年代以降は1%台の低水準で推移していましたが、近年は上昇傾向にあり、2015年度には3.9%と全産業平均に並びました。また、東京商工リサーチが3月期決算の上場企業を対象に調査したところ、2016年度の平均年間給与は建設業が全10業種の中で最も高く、唯一700万円を超えたという結果が出ました。

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 直近の決算(2016年4月~17年3月に期末を迎えた「16年度決算」)でも、業績は引き続き好調でした。日経コンストラクションでは9月11日号で特集「建設会社決算ランキング2017・好機を生かせ、相次ぐ“最高益”」を企画。建設会社の土木売上高をランキングし、好調だった16年度決算の内容を分析しました。

日経コンストラクション2017年9月11日号特集「建設会社決算ランキング2017・好機を生かせ、相次ぐ“最高益”」から
日経コンストラクション2017年9月11日号特集「建設会社決算ランキング2017・好機を生かせ、相次ぐ“最高益”」から
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 本誌では490社に調査票を送付し、155社から得た回答をまとめました。土木工事の完成工事総利益率が前年度より増加した会社は全体の6割強。なかでも大成建設、鹿島、大林組、清水建設の大手4社では、同利益率の平均が対前年度比2.8ポイント増の16.4%と、ここ10年で最も高い数値を記録しました。

 その“最高益”の使い道として目に付いたのが、社員の待遇改善です。ここしばらく、将来の担い手確保に向けて待遇改善の必要性が叫ばれ続けていますが、余裕のある今、それに本腰を入れている会社が多いように感じます。例えば大成建設は、全社員を対象としたベースアップとは別に、若手社員に絞った賃上げを実施。大林組では全現場での4週8休を目指した取り組みを始めています。こうした自社の社員を対象にした動きだけではありません。五洋建設は下請け代金の支払いについて、この7月以降の新規契約分から手形を廃止し、全て現金化しました。下請け会社の経営健全化で、社会保険未加入の解消を狙っているわけです。

 冒頭で、給与は他産業より高くなったことに触れましたが、休暇の少なさや労働環境の厳しさといった面では、まだまだ他産業に後れを取っている感が否めません。他産業との人材の争奪戦に勝ち残って行くには、好調な今だけでなく、今後も継続的な待遇改善の努力が欠かせません。