テレビ東京系列の人気番組、「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」。蛭子能収さんと太川陽介さん、女性ゲストの3人が、高速道路を走らない「ローカル路線バス」だけを乗り継ぎ、3泊4日でゴールを目指すという企画です(今年3月から新シリーズで出演者が変更)。

 「バスがつながらなければ歩く」というルールですが、せっかくバス停を見つけても、地元の人に「このバスは今年から廃止されたよ」と教えられ、3人がとぼとぼと歩き出すといったシーンをよく見かけます。また、放映時は走っていたバス路線がその後に廃止され、既に再訪するのが不可能になってしまったルートも複数あるようです。

 このように鉄道やバスの廃止が相次いでいますが、地方部では交通手段をどのように確保しようとしているのでしょうか。自治体が投入できる予算が限られているなかで、実は最近、先端技術を採用して運行の効率化を目指す例が出てきています。日経コンストラクション7月10日号の特集「地域交通ネクストステージ」で取材しました。

日経コンストラクション2017年7月10日号特集「地域交通ネクストステージ」から
日経コンストラクション2017年7月10日号特集「地域交通ネクストステージ」から
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 もともと地方部では自動車免許の保有率が高く、鉄道やバスに乗らない生活が定着していますが、高齢になれば運転は難しくなってきます。そこでクローズアップされるのが、先の「バス旅」でも時々耳にするフレーズ、「デマンド」型の交通。予約制の乗り合い自動車で、使い勝手、料金ともに、路線バスとタクシーの中間的な存在です。自治体が税金を投入して運行する「コミュニティーバス」の運営が立ちゆかなくなった場合に導入されるケースが多いようです。

 とはいえ、もともと利用者が少ない地域ですから、需要と供給をうまくマッチングする工夫をしないと赤字がかさむばかりです。その解決の切り札として、最先端のICT(情報通信技術)に期待が集まっています。

 例えば、「自動運転技術」。国土交通省ではこの夏以降、10カ所の中山間地域で、道の駅を拠点とした自動運転の実証実験を始めます。商業施設や診療所などが近くにある道の駅と、住民の家などを結ぶ4~5km程度のルートを自動運転車で巡回させる試みです。また、2年前に自動運転への参入を発表したディー・エヌ・エーは、横浜市と連携協定を結び、「自動運転プロジェクト」をスタート。交通が不便で高齢化が進む横浜市内の大規模団地での交通確保を検討しています。そのほかNTTドコモなどでは、AI(人工知能)を利用して利用者の需要を予測し、バスなどの運行効率を高める研究を始めています。

 コンパクトシティーのように、住民が歩いて行ける範囲で生活が可能な街をつくるのが理想かもしれませんが、防災集団移転のようなケースを除けば実現は困難でしょう。古き良き「ローカル路線バス」は減少の一途ですが、より身近な交通手段の確保に向け、自動運転技術やAIが救世主となるかもしれません。