4.Siam Discovery

 再びタクシーを市の中心部に走らせ、「サイアム」という、ショッピングモールやデパートが集まる繁華街エリアへ向かった。タクシーを大型ショッピングモール「Siam Discovery」付近に止めた。日本のnendoが改修設計を手掛けており、吹き抜けの拡張やブランドによらない店舗デザインの統一など、設計の工夫が満載だ。

Siam Discovery。大型商業施設を全面リニューアルした。 改修設計者:nendo、竣工年:2016 年、所在地:Rama I Rd, Khwaeng Pathum Wan, Khet Pathum Wan, Krung Thep Maha Nakhon(写真:日経アーキテクチュア)
Siam Discovery。大型商業施設を全面リニューアルした。 改修設計者:nendo、竣工年:2016 年、所在地:Rama I Rd, Khwaeng Pathum Wan, Khet Pathum Wan, Krung Thep Maha Nakhon(写真:日経アーキテクチュア)
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 既存の建物は奥行き方向に深く、エントランス付近で人の流れが滞っているという課題があった。改修に当たり、点在していた複数の円形の吹き抜けを拡張してつなぎ、奥まで人々を誘導する長さ58mもの細長い吹き抜けを設けた。

改修で生まれた細長い吹き抜け空間(写真:日経アーキテクチュア)
改修で生まれた細長い吹き抜け空間(写真:日経アーキテクチュア)
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 各売り場のインテリアをブランドに依存せず「Lifestyle Laboratory」というテーマのもとにつくり上げるという実験的な取り組みも面白い。

売り場のひとつで、カジュアルシューズのコーナー(写真:日経アーキテクチュア)
売り場のひとつで、カジュアルシューズのコーナー(写真:日経アーキテクチュア)
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5.Siam Square

 ちょうど正午を回ったので、私たちはサイアムの老舗タイ料理店で本場トムヤンクンを味わってから、サイアムエリアを散策した。Siam Discoveryの正面には、林立する大型商業施設と打って変わって低層の建物群がある。「Siam Square」というこのエリアは、若者向けのカフェやさまざまなショップがひしめく、昔ながらの繁華街だ。

Siam Squareは、バンコク有数の繁華街だ(写真:日経アーキテクチュア)
Siam Squareは、バンコク有数の繁華街だ(写真:日経アーキテクチュア)
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 「ショップハウス」と呼ばれる間口の狭い建物が密集している。1965年に最初の店舗がオープンして以来みるみる店舗が増えた。王立チュラロンコン大学の敷地であり、その土地利用方針によって大規模な再開発の手を逃れ、街並みが保存されている。道路に面する店は1スパン1 店舗が基本だが、なかには1スパンを2つに割った狭い店舗や内部で2スパンをつなげて拡張した店舗も見られる。

Siam Squareにはレトロな映画館などもあり、のぞいてみると楽しい(写真:日経アーキテクチュア)
Siam Squareにはレトロな映画館などもあり、のぞいてみると楽しい(写真:日経アーキテクチュア)
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6.サイアム・スクエア・ワン

 駅に直結する吹き抜け動線で有名なショッピングセンター「サイアム・スクエア・ワン」の内部を通ってサイアム駅の北側に出た。サイアム・スクエア・ワンは、半屋外空間が特徴的な商業施設だ。かつてSiam Squareの一部だったが、元あった映画館が 2010年の反政府デモで焼失したため、その敷地を再開発した。

サイアム・スクエア・ワン。中央の大吹き抜け空間の傾斜した床がSiam Square側からBTSサイアム駅までをつなぐ。 設計者:OBA、竣工年:2014 年、 所在地:254 Phayathai Rd, Wang Mai, Khet Pathum Wan, Krung Thep Maha Nakhon(写真:日経アーキテクチュア)
サイアム・スクエア・ワン。中央の大吹き抜け空間の傾斜した床がSiam Square側からBTSサイアム駅までをつなぐ。 設計者:OBA、竣工年:2014 年、 所在地:254 Phayathai Rd, Wang Mai, Khet Pathum Wan, Krung Thep Maha Nakhon(写真:日経アーキテクチュア)
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空調のあるエリアは小さな店の占める下層 2フロアのみだが、その送風による自然換気や植物を置いた柱の効果によって施設内は23 ~25℃に保たれている(写真:日経アーキテクチュア)
空調のあるエリアは小さな店の占める下層 2フロアのみだが、その送風による自然換気や植物を置いた柱の効果によって施設内は23 ~25℃に保たれている(写真:日経アーキテクチュア)
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