機能改善の核は「階段」

――機能面での改善のために、建築的および技術的に、特にどの点を改善しましたか?

 これまでのマーティン・ルーサー・キング・ジュニア図書館と比べると、大改造がなされています。ひと言でいうと、改修後の図書館には、いくつもの図書館の機能や性格が統合されています。子ども用のエリアに大きく注力する一方、地下には広々とした空間を設けました。障害者のためのエリアもあります。また新装図書館には、ワシントンの歴史についてのコーナーや、大きな研究エリアも設けています。さまざまな図書コレクションが1つの図書館に集められているのです。

 この図書館で私が非常に好ましく思う点は、低層(地下1階建て・地上5階建て)で、地上から建物の全容が見えること、そしてフロア空間が巨大であることです。新たな図書館は、すべての人のためのものであり、思わぬ幸運を招く発見があり、移民たちが英語を習ったり、技術を習得したり、職業訓練を受けられたり、子どもを連れて来られ、リサーチができるような生涯教育の場として、人々を刺激的する場所としてのさまざまな機能を備えたいと考えました。

南側階段室の改修後イメージ。地上階から屋上までを貫く階段によって、歩いて回れる図書館を目指す。水平方向だけでなく、本を媒介とした出会いや交流を生む垂直方向の動線を活性化させる(資料:Mecanoo Architecten/Martinez +Johnson Architecture)
南側階段室の改修後イメージ。地上階から屋上までを貫く階段によって、歩いて回れる図書館を目指す。水平方向だけでなく、本を媒介とした出会いや交流を生む垂直方向の動線を活性化させる(資料:Mecanoo Architecten/Martinez +Johnson Architecture)
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 この建物のユニークな点は、改善された全く新しいパブリックな階段が地上階から最上階までを貫き、思わぬ発見や出会いにあふれていることです。私たちはそれを「ソーシャルな階段」と呼んでいます。そして図書館では、書物から学ぶことができるがゆえに、人々が集まって出会い、対話をする場になることです。語り合うことで、新しい学びも生まれます。