注目企業の経営トップや各分野の専門家が登壇し、来る2016年の政治経済や産業の動向を大胆に占う「徹底予測フォーラム2016」。11月25日に開催する同フォーラム[プログラム]に先立って、登壇する企業トップのリーダーシップや陣頭指揮する新たな取り組みを紹介する。今回は和田勇・会長兼CEOのリーダーシップの下で加速する積水ハウスの海外展開を紹介した記事を再掲する。
※初出は日経ビジネス2015年2月23日号、記事中の役職、略歴は掲載当時のものです。
豪シドニー中心部から50km内陸に位置する小さな市、カムデン。伝統的なレンガ壁の平屋住宅がずらりと並ぶ新興住宅地で、きれいな白い壁の一軒家が独特の存在感を放っていた。
3カ月前に近隣都市から家族4人でカムデンに引っ越してきたジュリー・アルフォンゾさんの家だ。
「予算オーバーだったけれど、いい家が購入できて大満足」
アルフォンゾさんは、室内を見渡しながら笑みをこぼす。彼女が購入したのは、積水ハウスの木造住宅「シャーウッド」。工場で木材の加工を済ませ寸分の狂いなく現場で組み立てる、いわば木造の工業化住宅だ。
日本の住宅メーカーは先進国では木造という武器で勝負を仕掛けている。
簡単組み立ての木造エコ住宅
豪州の人口は日本のわずか5分の1の2300万人。だが、移民を積極的に受け入れているため年2%前後のペースで人口増加が続いている。総人口は2050年に2010年比5割増になるとの試算もある。それだけ住宅需要も大きく、人口の増加ペースに土地の確保や住宅の着工が追い付いていない状況だ。加えてこの1年、同国の主要8都市の住宅価格は8.3%も上がっている。
そんな絶好の市場に積水ハウスが進出したのは2008年。宅地開発なども手広く手掛け、戸建ては年500戸の規模に。4カ国への海外進出を果たしている積水ハウスにとって、最も売上高の大きい海外市場となった。