審査員の人材不足は大きな課題
──コンペ・プロポでは、同じ建築家があちこちの審査員を務めることがあります。お願いできる人がなかなかいない。その辺はどのように打破すればいいでしょうか。
それはなかなか悩ましい問題ですね。審査員を頼みたいと思うような人物は、コンペに参加してもらいたいという人の場合が多いですから。
実際は各自治体で人脈や、つてを持っているわけではありません。私はやはり建築学会のようなアカデミックな組織にそういうサポートをできるような、審査員を紹介できるような第三者的な仕組みがあればいいと以前から思っています。それは、審査員に限らない話です。
小野田泰明さん(東北大学教授)のように、自治体以外にもコンペのコーディネーションをする方がいらっしゃいますが小野田さん以外には見当たりません。
──新井さんが今後フリーの立場になれば、全国のそのような案件をサポートできるのでしょうか。
サポートするのは構わないと思っています。そのようなオファーがあれば喜んでお受けしたいと考えています。困られている方は全国にいらっしゃると思いますので、少なくとも、相談には乗りたいですね。
だからと言って、コンペのコンサルタント的なものを始めようというところまでは、なかなか踏み切れません。もしかすると、東京に住んでいれば始めたかもしれませんが、地方ではなかなか難しい。
なぜ市町村がコンペをやらないのかという理由の1つに、既得権益のある建築業界が、そういうものをあまり望んでいないということが、恐らくあると思います。それは群馬県に限らず、ほかの地域でも同様だと思います。
──今後このような形で行えば、コンペやプロポーザルがより良くなるのではないかという手立てなどがありましたらお願いします。
先ほども言った通り、学会のような1つの中立的な組織で設計者選定を支援する仕組みをつくってもらいたいですね。かと言って支援を求める場合、やはり無償でサポートしてくれというわけにいかない。
現在の自治体では、その費用を出すというのができないんです。大した額ではないのにできません。なぜそれができないかというと、前例がないからです。
そういうものには費用がかかるので、補助金の中で面倒を見るとか、あるいは、そのようなことをすれば、逆に交付金の率を上げるとか。「持続可能で国民に愛される建築をつくる仕組みを構築して設計者を選定しましょう、その費用は未来への投資です」という方針を国が打ち出すことがかなり重要だと思います。
もう1つは法律を変えること、つまり会計法や地方自治法の改正です。プロポーザルやコンペをするに当たって、予算との兼ね合いをはじめ、いろいろな部分について、それに見合った費用の交渉ができるということも含めて変える必要があります。
また、「品確法」や「官公庁施設整備における発注者のあり方について(答申)」などによって、入札によらず設計者が決められるようになってきましたが、地方自治体の発注件数の8~9割が入札です。設計者は入札で決めてはいけないということを、仕組みも含めて法で打ち出していくことが必要だと思います。
それらを行えば、少しは良くなると思うのですが、とはいえ法としてやると今までやってきたいわゆるプロポーザルが形骸化するだけで、本当に良いものができるかどうかは、また別の問題かもしれません(笑)。それでも、プロポーザルをやって選ぶことのほうが入札よりも良いと思います。
(その2に続く)
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